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2005年4月10日 (日)

反日暴動を見て思うこと

中国で再び反日デモが盛んになっています。4月9日に北京で一万人規模の反日デモが起き、一部が暴徒化しました。今月3日に日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対する青年らの抗議デモが発端となって、いつのまにか反日運動へと拡大してしまい、四川省成都市では日系スーパー『イトーヨーカドー』への襲撃や数千人規模の反日デモに発展。広東省深セン市でも同じ日、約二千人が反日デモ行進。その他にも東北部(旧満州)や広東省の省内で日本商品の不買運動が伝えられるなど、反日気運はあっという間に中国全土へと拡大しています。既に、尖閣諸島の領有権を主張する『中国民間保釣(尖閣防衛)連合会』という民間反日団体が、先月からインターネットを通じて日本の歴史教科書問題や安保理入り運動に反対を呼びかけていましたが、それに呼応したかのように署名活動が各地に広がりをみせるなど、とにかく反日運動のネタには事欠かない様相です。

この抗議デモの報道を見て、貴方は何を感じられたでしょうか。私達は、どうしても自分達の尺度で出来事を考えがちですが、例えば中国の抗議行動に関しては、日本人の尺度では測れない問題が隠されています。中国の憲法には「中華人民共和国の市民は、言論、出版、集会、結社、進行および示威の自由を有する。」(第35条)という条文が存在します。日本人から見れば当たり前の条文のように思えますが、ここにいう「進行および示威」(デモ行進)を、中国政府が市民に無条件で許しているかというと、そうではありません。実は政府に対して批判的なデモは認められない仕組みになっているのです。中国でもデモを行う時には当局に届け出をしないと行けません。デモはすべて当局の許可制になっているのです。当然、政権を批判したり、政府にとって都合の悪い抗議行動は許可されません。こんな仕組みですから、反政府デモの届け出をした個人やグループは当然は当局からマークされますし、実際にしばしば政治犯として逮捕されているようです。当然ですが、誰も当局に目を付けられたくありません。自然に反政府デモの届け出はなされないということになります。どうしても反政府デモを行いたければ無届けで実行に移すしか有りません。そうすると当局は無届けを理由にデモの参加者を摘発するのです。つまり、相当な覚悟がなければ、政府への非難を大衆運動としては起こせないシステムが確立されいます。このことがひいては言論弾圧につながっているのですから、中国に実質的な言論の自由があると思い込むのは誤りなのです。少し忘れかけている方もおられるかも知れませんが、1989年6月4日に北京市で発生した天安門事件を知れば、この話はよく理解できると思います。あの頃、政府に対して民主化を求めるデモ行進をした人々が、戦車と兵士によって鎮圧されたのですから。

<天安門事件について>
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E5%AE%89%E9%96%80%E4%BA%8B%E4%BB%B6

同様の事例で私が個人的に印象に残っているのは、2003年の12月に報道されたひとつの事件です。中国のウェブサイト上で、言論や結社の自由を認めるよう中国当局に呼びかける論文を発表して、「国家政権転覆罪」で逮捕、起訴されていた中国・西安の元中学教師顔均氏に対し、西安市中級人民法院(裁判所)が懲役2年の有罪判決を言い渡したのです。顔氏は天安門事件の再評価、失脚した趙紫陽元首相の軟禁解除、自主独立労組結成の解禁などを求める5本の論文をネット上で発表した行為が訴追の理由だそうです。日本で同様のことをしても、当たり前ですが逮捕されることはありません。しかし、反日の書き込みをいくらしても中国で摘発はされないのはなぜなのでしょう。

<【中国】ネットで「言論の自由」訴えた元教師に懲役二年>
      http://world.seesaa.net/article/2255.html

こうした仕組みを知ると、今回の様々な形での反日抗議運動が実施可能だったのは、中国政府が許可をしたデモで有ったからということが判ります。表面的には、成都での日系デパート襲撃事件と反日デモとの背後関係は不明と報道されていますし、深センの抗議デモは反日グループが組織していることは伝えられています。産経新聞の記事によると「中国政府は安保理問題では”日本の歴史問題への反省が必要”と大衆に迎合的な態度をとっており、反日行動を抑止する動きは当面出ていない。」と控え目な論評していますが、歴史問題への反省が必要というキーワードが、ある事実を伝えようとしている気がして成りません。

中国の官製デモの特徴は、実際のデモのテーマと関わりなく、必ず「日本帝国主義を打倒しよう」というスローガンがアレンジを変えた形で登場することです。例えば、2003年9月に広東省珠海で発生した日本人団体による集団買春事件。ホテルに500人余りの売春婦を一度に呼んで、セックスパーティーを行った事件を憶えておられると思います。事件自体は破廉恥な行いであり、非難を免れないのは事実です。しかし、この事件の起こった日が、満州事変から72年目にあたる日の前後にあったことを喧伝し、世論をさらに悪化させる工作があったのも事実です。中国国内のインターネット上には、連日「人面獣心の日本人」とか「第2の国恥」という表現が飛び交い、「エイズを日本に輸出しろ」、「日本製品を買うな」という扇動的な文も踊っていました。そして、この事件を取り上げた韓国のマスコミまでもが、「日本の歴史教科書問題と戦前の日本の化学兵器による被害などが重なり、反日感情は最高潮に達している」とエールを送るに至っては、何をかいわんやです。

<韓国中央日報の記事>
 http://japanese.joins.com/html/2003/0928/20030928185344400.html

今回の安保理問題では、韓国も北朝鮮も反対の姿勢ですから、中・韓・北朝で、反日気運を国民運動という形で盛り上げやすい情勢が存在していました。これが国内的には不買運動や暴動といった事件を正当化しやすい状況になったのも幸いでした。普通なら、オリンピックや万博の開催が控えている中国で、暴動が多発することは治安の悪化を世界に喧伝するようなものです。けして好ましいことではありません。本来なら政府が必死になって暴動の拡大の防止と鎮圧に走り回ることでしょう。それが反日運動であるだけで、何ら積極的な治安活動が行われないのは、つまりは政府にとって、治安の不安定というダメージと引き換えにしても良い事態だったということでしょう。ある意味、暴動に発展しても仕方がないし、ある程度は争乱も許容しておこうという判断が当局にあったと思われます。そして、他の問題に転嫁しないように、ちゃんと収拾できる治安部隊を配して見守ったというのが現実の姿だった気がしてなりません。今回の日本大使館への投石事件も、投石までは許容範囲で、あれ以上の発展は許されないことだったのでしょう。

普通の日本人の立場からすれば、1979年から開始された対中国ODAが既に累計供与額で約3兆5千億円に達し、26年間ものあいだ税金を注ぎ込んできたのに、未だに「反省していない」、「歴史認識に問題がある」などの苦言を長年に渡って呈されては、質の悪い詐欺にあっているような気分にすらさせられます。公式には日中両国政府の間で、国交の正常化が行われた際に、中国は戦後賠償の請求権を放棄しています。さらに言えば、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」という日本側の謝罪も明記され、まさに日中間の国交は正常化されたのですから。

☆日中共同声明(抜粋)
五、中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。

 <日中共同声明全文>
    http://www.panda.hello-net.info/data/seimei.htm

それでも中国国内では「ODAは戦後賠償の代わりであり、もらって当然」と考える人は多いようです。要するに、中国の一般の人は『日中共同声明』の内容は知らされていない(教科書等で取り上げられていない)ということでしょう。そうなると日本のODAが戦後賠償に近いものだと考えるのは自然な捉え方です。また、ある程度の事情通は別の意味で日本の戦後補償は僅かしか行われていないと感じる事情もあります。それは、ODA累計供与額の約9割を占めるのは円借款だということです。実は返済不要な無償資金協力や専門家派遣などの技術協力費用負担は、残りの一割に当たる約3千5百億円ほどしかおこなわれていません。円借款も低利で長期の融資ですから、返済の負担が重いとはいえませんが、華やかな経済発展の裏側で、貧困にあえぐ九億人の農民を抱える中国には、引き続き日本の援助を期待している面が無いとは思えません。では、どうして日本を逆撫でするような当て擦りをするのでしょう。

一部の評論家もいうように、国内の不満をガス抜きする方便として、反日を誘導するというのは納得のいく指摘です。古今東西、国内の閉塞感を外に向けさせることで解消するのは常套手段です。しかし、反日誘導は、それだけに止まらないのではないでしょうか。敢えて不買運動にまで拡大させることで、日本の世論を誘導しようとする効果を狙ってもいると思いませんか。このまま不買運動が拡大すれば、中国に進出している日本企業は被害を受け続ける事に成りかねません。これでは日本企業は悲鳴を上げてしまいます。例えば、アサヒビールの不買運動は、アサヒビールのライバルとなる国内のビール会社にアサヒビールのシェアーを与える効果も狙えます。事態が沈静化しても、このシェアーの回復は企業の努力でしか補えません。まして、民衆の中から起こった不買運動では誰にも損害賠償を訴える訳にはいかないのです。こうした被害の数々が少なからず日本の政府にも圧力となって伝わります。念が入っているのは、この問題に小泉総理の靖国参拝問題を絡めて、すべての元凶が日本政府の現政権にあるかのように転嫁することです。こうなると、日本政界にいる親中派の人々が、これを好機と倒閣運動や平和運動の旗を振るのですから、日本にも被虐的な政治家や扇動家がいるものです。さらに、中国政府からすれば、日中の経済水域で政治問題化してきた『春暁』ガス田開発、さらには日本がアメリカと友に勧めるミサイル防衛など、中国にとって頭の痛い問題を、同様の手で揺さぶり続ける布石にもなっているといったら被害妄想ですか。一部の人は経済的な結びつきを心配されると思いますが、まだまだ中国が独自に製造できない工業部門の製品は沢山あります。また、日本向けに輸出する食品や衣料品などで潤っている産業が有る限り、『政寒経暖』の関係は存在し続けるのです。まあ、金の切れ目が縁の切れ目という関係ではありますが。

中国の政治活動は、例えていえば囲碁のようなものでしょう。どの国家も自らの国益を優先して内政と外政を行うのは当たり前のことです。また、外交的には二枚舌も三枚舌も信義に悖る行いとはいえません。我々も中国からの批判に恐れず、批判は批判として聞く耳を持ち、領土問題のように将来に渡り禍根を残すような問題には正論で堂々と対応するべきだと思います。戦後60年、極東の政治情勢は様変わりをはじめています。特に中国との対立は、これからも増えるでしょう。差し手を誤らず、勝とうとはせずに、負けない算段をすることです。勝とうとすれば無理をしなければなりませんから。碁石の中にはアメリカという強力な黒石もあります。日本一国で碁をさすのではなく、二極から三極に碁盤を広げる外交を選択すべきだと思います。

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コメント

こんにちわ★
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ランキングに参加すると見てくれる人が今以上に増えますのでお得です(^^)/
ではこれからも頑張って下さい☆

 どもども、ご無沙汰しています(~_~;)。宣伝までして頂いて恐縮です。
 とうとうブログですか。FDR辺りだと、フォーラム自体をブログ化して、アクティブをライター登録しちゃって、そこで軍事問題が発生する度にタイムリーなコメントをアップするというのもありですよね。

大石様
 コメント有り難う御座います。これからも宣伝させて頂きますので、力作をおまちしております。

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