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2005年4月15日 (金)

反日暴動を見て思うこと(再び)

今週末も中国で反日デモが予想される報道が続いています。予定では17日の日曜に北京で日中外相会談が予定されているので、まだまだ騒動は収まりそうにありません。

日本人の感覚としては、「中国の人々が凄く怒っているなぁ・・・やはり、ここは日本が一歩引いて丸く収める方がいいのではないの。それで中国にも恩が売れるし。」という辺りが普通の思いではないでしょうか。謙譲の情で自分の思いよりも他人の思いを優先する気持ち。これは和を乱すのが一番良くないという日本人独特の精神文化です。いわば日本人は「和」の民族なのです。例えば、日本人の伝統的な座り方は正座です。身分に関わらず全員が正座をします。しかし、韓国や中国で正座をするのは、本当に身分の低い者や罪人だけです。ですから、土下座をするのは大変な恥辱です。その土下座を日本では、正式の場で目上の者に対して集団で行うのを厭いません。(我々はこれを礼だと思っていますから平気ですが、見方を変えれば土下座に見られるのです。)さらに日本人が和を乱さないよう平等を常に心懸けようとします。独り勝ちや独り締めといった言葉が悪い事と位置付けられているのは、そうした精神構造の現れでしょう。

日本人の悪いところは、自分達の思いが伝わらない相手に対して、対話を続けようとするしつこさが無く、すぐに諦めて仕舞うことです。一旦諦めると、今度は相手が何を言い立てて来ても取り合おうとせず、自分の思いだけで行動しがちです。こうした態度が、隣国の韓国や中国との摩擦や誤解を生み出している遠因だと思います。

その韓国は「怨」の国です。自分に対して敵対する、或いは恥辱を与えた者を「怨む」ことで、自己を確立しようとする精神構造の民族ですから、自己への敵対行動にはハッキリとモノを云いますし、妥協はしたくないという思いが前面に出てきます。ですから、お互いに云いたいことを言い合い、喧嘩をして、自分の存在を確認しようとします。それで相手に思いを伝えようとするのです。日本人からすれば、強い語気で喧嘩腰に詰め寄られては、まずは引いて様子を見ようと思うのは仕方がないのですが、韓国人からすれば日本人は自分達の思いを受け止めようとせず、ただ逃げるだけの不甲斐ない相手と思えてしまいます。こうして日韓の人々は、延々と誤解の再生産を何百年も続けているのです。

では、中国はどうでしょう。彼等は「克」を大切にする民族です。何千年も覇を競い合いながら、繁栄と滅亡を繰り返してきた歴史的経験からか、負けることはとにかく嫌います。克つことが大切なのです。中国人に妥協を迫るには、相手の面子を立てた上で、実利面での見返りを堂々と要求するのが常識です。とにかく他人から相手に負けたと烙印を押されれば、精神的には死んでしまうと恐れる民族なのです。結果を大事と考える中国人は、最後に相手を屈服させれば良いとも考える気の長い人々でもあります。しつこく何度でも自己主張を繰り返すのを厭いません。それで相手がウンザリして、折れてくれれば儲けモノなのです。哲人孔子が、中道を説き、「仁」と「義」を大切にしようと勧めるのも、それだけ中道は難しくあるからでしょう。

こういう理解の仕方で考えてみると、中韓の人々が語気荒く自己中心的な主張をしていると、我々が腹を立てるのは、誤解の元だと判ると思います。

ですから、今回の反日デモと、教科書問題や歴史認識問題に代表される外交を混合してはいけません。デモは以前も解説したように、官製のデモンストレーションであり、社会矛盾への不満をガス抜きする目的で行われています。このところ、中国政府がデモに自制を求めるのも、ガス抜き以上にデモが発展することを恐れているからでしょう。反日が、外国排斥に拡大したり、あるいは反政府活動に利用されはしないかと懸念しているのです。もし、デモが全国的に暴徒化して、日本以外のアメリカや欧州企業への襲撃事件や、外国人への暴行や殺害事件が多発し、中国政府がそれを収拾できない姿を世界中に報道されれば、政府の面子は潰れます。これから控えているオリンピックや万博の開催にも疑問符が呈されるでしょう。そんな事態だけは避けたいというのが中国政府の本音だと思います。

そうした意図が判るのが、中国警察による、先のイトーヨーカ堂襲撃の15人を拘束したという報道です。日本人は嫌いだが、事態の拡大は押さえたいというサインがよく現れています。けして、日本に妥協をしている訳ではありません。

 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/anti_japanese_protests_in_china/

その逆が、日本のガス田試掘権手続きを中国が「重大な挑発」と論評した件です。日本人は ガス田をめぐって、日本側が中国に地下構造のデータ提供と開発中止を求めてきたのに対して、一切これに答えず、日本との共同開発を主張しきたことを知っています。経緯を知る我々には何とも横暴な言い分に思われます。しかし、中国政府は今までこの経緯を公式に公表してこなかったのですから、「中国の権益と国際関係のルールに対する重大な挑発だ」と非難する談話を発表し、日本側に抗議したことを明らかにするのも、一方で国内向けであり、一方では国益に適う行動なのです。下手に妥協すれば、従来から主張している排他的経済水域(EEZ)の境界線(沖縄トラフ)問題に関しても足をすくわれる事に成りかねません。ですから、談話でも「中日双方には東シナ海の大陸棚の境界問題で係争があり、中国側は一貫して双方が外交交渉を通じて解決すべきだと主張してきた」と強調することを忘れていませんし、「日本側は中国側の正当な主張を無視し、一方的に主張する『中間線』を中国側に無理に押しつけようとしている」として、日本側の主張を「中国は承認したこともないし、承認するつもりもない」と切り捨ててみせるのです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050414-00000003-yom-int

ここで、注意しておかないといけないのは、中国政府がガス田の共同開発を主張している点です。先に中国人が面子を重んじる話をしました。国費を投じて建設した櫓を取り壊すような妥協を彼等は望んでいないと云うことです。開発は認める。ただし、噴出した天然ガスは全て中国から日本が独占的に買い取る。こういった妥協案で中国政府の面子を立ててやり、日本が実利を要求するので有れば、彼等は国内には日本に勝利したと喧伝できるというものです。

互いの国の精神構造の違いを、日本人も正しく理解して、日本は日本の主張を自信を持って貫き通せば、それでいいのです。もし、反日デモ隊が日本までやってくるなら、それなりに歓迎してあげましょう。懐の深さは、中韓の人にも理解できます。

実際、今回の事態では、世界の主要メディアの論調も、中国政府の意図を察し、中国が「歴史カード」を使い、民衆の不満をあおっているとする冷めた分析が多いのです。

11日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は「日本は過去についてもっとすべきことはあった」としながらも、「中国自身の歴史の歪曲(わいきよく)の度合いは日本よりもはるかに大きい」と指摘している。「中国は世界のなかで重要な地位を占めるようになっており、政府には国民が世界を正しく理解し、恨みの感情で行動しないようにする特別の責任がある。日本に対して繰り言を言う前に、中国自身の歴史解釈を見つめるべきだ」とも強調している。

同様に、12日の英紙フィナンシャル・タイムズは「日本が過去を正直に認め、無条件に謝罪すべきだ」とした上で、「直接の問題は中国の指導者が暴力的な反日デモを容認していることだ。日本の戦後の平和主義や経済面での中国への寛容さを国民に知らせず、日本で歴史がゆがめられていると中国が訴えるのは偽善だ」と指摘したている。

辛辣なのは、11日のフランスの保守系フィガロ紙だ。「日本の“修正主義者”への怒りを表明することは真の民主主義への渇望を表明するより容易だ。共産主義体制ではナショナリズムは常に欲求不満の方向を変える代替品としてイデオロギーの役に立っている」という見方を示している。

台湾の各紙は、日本の立場に理解を示し、「日中が緊張した場合、台湾は日米に接近せよ」という学識経験者のコメントや、「中国市場から撤退する日本企業を台湾に誘致するチャンス」との行政院(内閣)内部のコメントを伝え、したたかなところを見せています。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050414-00000001-san-int

という具合ですので、週末のデモの報道も、あまり気に掛けず、冷静に見守りましょう。

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