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2005年4月11日 (月)

キリスト教原理主義とハリウッド映画の関係

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『ナショナル・トレジャー』を観てきました。この映画は、ニコラス・ケージ版のインディー・ジョーンズともいうべき作品でした。歴史を題材にした謎解きが、やがて宝探しにつながっていく推理の掘り下げの面白さと、お約束の二転三転する物語展開は単純明快で、誰でもワクワクさせてくれる魅力がある気がしました。

『ナショナル・トレジャー』の話の核になるのは、フリーメイソンとテンプル騎士団です。フリーメイソンが闇の黒組織という姿では描かれず、テンプル騎士団に連なるキリスト教原理主義者として描かれていて、ナショナル・トレジャーをアメリカで守るための秘密結社として扱われています。物語にちりばめられた謎も、フリーメィソンの世界観を題材にして作られているのも、一層謎に感じられて面白みを煽ります。そのひとつが一ドル札の裏に描かれている謎のあの絵なんです。(上段左上の絵)

映画の筋がネタバレになってしまうので、ここまでにしておきます。ただ、『ナショナル・トレジャー』を見て思うのは、近年のハリウッド映画には本当にキリスト教の原理が筋立ての下地になっている作品が多いなということです。

例えば、日本でも大ヒットしたキアヌ・リーブスの代表作『マトリックス』。この作品の続編が公開される度に、描き出される内容は(普通の日本人には)難解になり、日本ではあまり評判が上がらなかったような気がします。『マトリックス』が描く世界観は、未来社会に姿を借りた欧米神話的寓話であると解釈すれば、意外に理解が出来るように思います。勿論、その中心にあるのはキリスト教の原理です。例えば、人間側の代表としてマトリックに戦いを挑む、ネオ、トリニティー、モーフィアスの3人の仲間。彼等の名前の意味を知る欧米人には、素直に脚本の意図を感じ取ることが出来ると思うのです。

キャリー・アン・モスの演じたトリニティー(TRINITY)は(カトリック・英国国教会で)三位一体の神をさす言葉です。あの「神と子と聖霊の名において」は、このトリニティーを現すキリスト教の中心的教義の文句です。アウグスチヌスは三位一体論で「神の三位一体性を人間の心的活動(記憶と悟性と意志・あるいは精神と認識と愛)の三位一体性と類比的に説明しようと試みました。マトリック(仮想現実世界)によって人間の心的活動を奪われた人類。その人類が人間性を取り戻す過程は、まさに自らの記憶を取り戻し、自らの存在を悟り、自らの意志で行動することです。また、トリニティーは転じて三組という意味も持ちます。(トリプルの語源もこの言葉です。)ネオ、トリニティー、モーフィアスの3人の仲間も、三位一体を象徴すると考えれば納得しやすい存在です。もし、この3人をアウグスチヌスのいう心的活動に置き換えられるなら、ネオは「精神」を、トリニティーは「愛」を、モーフィアスは「認識」を現しているのかも知れません。この三位一体の思想は、ヒンドゥー教においても、創造、維持、破壊を司る三神一体の神「梵天」、「ヴィシュヌ」、「シヴァ」を象徴していたり、古代エジプトではピラミッド(直角三角形)は宇宙や自然の象徴とみなし、底辺はオシリス(或いは男性原理)を表し、垂直の線はイシス(或いは女性原理)、斜辺はホルス(或いは両原理の生産物)を表していたとされています。古来から神を現す図式としてあった思想に、三位一体との関係があったのは興味深い一致です。

モーフィアス(MORPHEUS)は、ギリシャ神話に出てくる夢の神モルペウスの読替です。夢の中で、人に人間の形を認識させ、それを変化させる夢の神だとされています。まさに映画のモーフィアスの役柄そのものを象徴する名前です。ついでにいうとモルベウスは「モルヒネ」の語源となった言葉でもあります。

そして主人公のネオ(NEO)。ネオは、「新しい」とか「最近の」という意味です。あの「ネオナチ」のネオがそうです。映画の中のネオは新人類(或いは超人類)を象徴する意味でネオと名付けられたんだと思われます。

モーフィアスの恋人ナイオビ(NIOBE)。こちらもギリシャ神話に登場するニオベの読替です。ニオベは人間で初めて大神ゼウスの恋人となり沢山の子供をもうけますが、増長してしまい神を嘲る態度を取ったため、神に子供を皆殺しにされ、彼女自身もゼウスに石にされたと言われています。この神話からニオベは、子を失って悲嘆にくれる女の代名詞になりました。これでは二人は結ばれるはずがありません。

現代イタリアの代表的な美人女優モニカ・ベルッチが演じた謎の美女パーセフォニー(PERSEPHONE)。メロヴィンジアンの妻でありながら、ネオとのキスと引き換えに、「キーメーカー」の居場所を教えた彼女。こちらもギリシャ神話のペルセポネの読替です。パーセフォニーはゼウスとデメテルの間に生まれた女神ですが、やがて冥界の王ハデスにさらわれて妃となり冥界の人となってしまいます。彼女は母デメテルによって冥界から連れ戻されますが、既に冥界の食べ物を口にしていたため、一年の三分の一を冥界で、残り三分の四を地上で過ごさざる得なくなります。このペルセポネが冥界に行っている四ヶ月間、母デメテルが大いに悲しむため、地上に穀物が育たない冬がやってくると言われています。何とも意味深な役名ですね。

そしてネオ達が守ろうとする覚醒した人間の聖地ザイオン(ZION)。これはシオン(エルサレムにある丘の名前)の読替です。シオンは転じて、イスラエルやユダヤ民族の事を現しますし、エルサレム(天国)やユダヤ人が理想とした神政政治も現す大切な言葉です。ネオはシオンを守るために復活した超人類。モーフィアスはネオを復活させる賢者。トリニティーは愛で二人を支える聖者。物語はキリストの復活を下敷きに、マトリックスに支配された世界から、人類を覚醒させ、真の世界に導いていくという十戒のような世界観を、コンピュータープログラムの世界に置き換えているだけという解釈も成り立つ気がします。ネオはバグとして必然的に発生し、キーメーカーにより修正プログラムとなって、マトリックの修復を行ったという表面の物語に、こうした聖書の世界観を織り込むことで、人々に理解しやすくている演出だとも云えるかも知れませんね。

『マトリックス』は、公開時にエジプトをはじめとして、主にイスラム教国で上映が禁止されたというのも、判る気がします。ユダヤ人がユダヤ人のために製作した映画とも解釈が可能ですし、イスラム教徒には反感を買いやすいストーリーです。必然というか、キアヌ・リーブスがマトリックスの後に選んだ作品『コンスタンチン』は、ローマ皇帝コンスタンティヌス一世(constantine)の名を冠した題名でした。コンスタンティヌス一世はローマ帝国でキリスト教を最初に公認した皇帝です。新首都をコンスタンティノープル(Istanbulの旧称)に建設したことでも、歴史に名を残しています。天国と地獄を見ることの出来る超能力を有した青年コンスタンチンが、死神と闘うキリスト教的世界観は、既にマレーシアで上映禁止になっているそうです。

ここ数年、ハリウッド映画は、こうしたキリスト教的世界観(原理主義的思想)を物語にする作品が増えてきている気がします。これから公開される『キングダム・オブ・ヘブン』も、その流れにある作品です。先日亡くなられたローマ法王の葬儀に、現職大統領として初めて参列したブッシュ大統領。彼の参列も、アメリカ社会でキリスト教原理主義の台頭を意識してのことなら、イラク戦争はさしずめ十字軍の遠征。正義のない戦争を、正当な戦いに置き換える大衆誘導なんだろうというほど、私は陰謀論者ではありませんけどね。

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コメント

どうもはじめまして。
トラックバックありがとう御座いました。
こっちからもトラックバックしておきましたので、これで相互トラックバックですね(笑)

ナショナルトレジャー、マトリックス、コンスタンティン・・・
どれもキリスト教が絡んでいるとは・・・
面白いですね。
それではまた。

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