« 孔子の戯言:『大中華思想』と『小中華思想』 | トップページ | 孔子の戯言:満蒙開拓団の父、東宮鉄男 »

2006年8月 6日 (日)

孔子の戯言:如何に核廃絶運動は衰退したか

今年も広島原爆忌が巡ってきました。

そこで少し面白いお話をご披露します。日本は世界で唯一の核兵器による被爆国です。ですから核アレルギーがあるのは当然です。その代表が核廃絶運動(反核運動)なのですが、ではこの運動はいつ頃から始まったのでしょう。

日本に反核運動が誕生した直接のきっかけは、1954年3月1日に行われたアメリカによるビキニ環礁での水爆実験だったとご存じでした。付近を航行していた焼津漁協所属のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員23人が死の灰により被爆したことが当時大変話題になったからなのです。この時の気運が生み出したモノのひとつが映画『ゴジラ』です。もうひとつが、核兵器廃絶を求める署名運動から発展した『第一回原水爆禁止世界大会』(1955年8月開催)だったのです。ということは広島・長崎への原爆投下ではこういった運動が起こらなかった(占領中は活動自体が禁止されていた)ということになります。つまり、当時の日本では原爆投下は戦争のせいであり仕方がないという感覚が支配的だったのでしょう。まあ生活がやっと安定してきた復興時期に重なるのも偶然ではないでしょう。

この『原水爆禁止世界大会』が『原水禁』(正式名称を原水爆禁止日本国民会議)となるのが1965年。つまり今年で41年の歴史を誇るのですが、運動の長さに比べると世界は核拡散の時代に突入していこうとしてるのは皮肉な話です。運動の成果が実っていないのには理由があります。その答えを探るヒントが『原水禁』組織化に10年の期間を何故要したのかという点にあります。

1955年の『第一回原水爆禁止世界大会』後、大会実行委員会は『原水爆禁止日本協議会』(原水協)と名前を変えます。変更した理由は、安保問題や原発問題への対応姿勢の対立が原因となって保守系及び民社党系勢力が脱退して別に団体を結成した(核禁会議)からです。

その後の1961年、第7回大会開催直後、ソ連が核実験を再開した際に、ソ連に抗議を求める社会党・総評系勢力と、抗議に反対する共産党系勢力とが対立。翌62年の第8回大会の最中にもソ連が核実験を行ない、再び同じ対立が起り、大会は大混乱。この際に共産党系代表が「核戦争の根源である米帝国主義を日本やアジアから追い出せ」という反安保・反米軍基地も視野に入れた主張をしたことは忘れてはいけません。ソ連の(共産主義の)核兵器は米国の核兵器とは別という論理だったんですから。

1963年の第10回大会で社会党・総評系がソ連の支援を受けて「いかなる国の核実験にも反対」のスローガンを掲げ部分的核実験禁止条約の支持を要求。一方で共産党系は当時核兵器開発を進めていた中国と呼応する形で条約に反対を表明し、三度目の内部対立に追い込まれます。結局、社会党系グループは脱退を表明して、この年の大会は流会。それで社会党系グループが1965年に立ち上げたのが『原水爆禁止日本国民会議』(原水禁)という訳です。

この時も共産党系グループは、「社会主義国の核兵器は侵略防止のためのもので容認すべき」と主張したそうです。イラク戦争もアメリカ主導だから反対するんですねと聞きたくなりますが、共産党は未だにこういう姿勢のままです。

1954年の運動開始当初、原水爆禁止運動は超党派を結集し、世論もこぞって応援する国民的な運動でした。しかし見てきたように党利党略むき出しの権力闘争。ソ連・中国の介入。挙げ句の果てが政党による系列団体化。これで核兵器廃絶運動の成果があったら奇跡です。

広島に原爆が投下された1945年8月6日から数えて61回目の今日。真剣に核兵器の廃絶を考えず、政治運動にした者達への責任は誰が追求するんでしょうか。草葉の陰で被爆して亡くなった人達が呆れ顔で嘆いていないか心配です。

 

« 孔子の戯言:『大中華思想』と『小中華思想』 | トップページ | 孔子の戯言:満蒙開拓団の父、東宮鉄男 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/97581/11301472

この記事へのトラックバック一覧です: 孔子の戯言:如何に核廃絶運動は衰退したか:

« 孔子の戯言:『大中華思想』と『小中華思想』 | トップページ | 孔子の戯言:満蒙開拓団の父、東宮鉄男 »

2015年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト
無料ブログはココログ