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2007年5月31日 (木)

知らないところで危機が進んでる

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070530id01.htm

「ロシア軍は29日、複数の核弾頭を搭載できる新型の大陸間弾道ミサイル「RS―24」の発射実験に成功した。ミサイルは同国北部プレセツク実験場から発射され、約5500キロ離れた極東カムチャツカ半島付近の標的に命中した。RS―24はロシアが配備する弾道ミサイル「トーポリM」の改良型といわれる。」

「イワノフ第1副首相は実験の成功を受け「ロシアはいかなるミサイル防衛(MD)システムにも打ち勝つ新たな戦術兵器、戦略兵器を手に入れた」と述べた。」

記事にあるRS-24はロシアが配備する弾道ミサイルSS-27(トーポリM/Topol-M)の改良型と言われています。ベースになったSS-27は戦略核ミサイルとして開発配備され、現在は、サイロ発射型のみが確認されています。「トーポリM」はロシア軍での呼び名で、西側ではアメリカがSS-27、NATOはシックル(sickle)というコード名で呼んでいます。核弾頭をひとつだけ搭載する単弾頭型ミサイルです。

今回この弾道ミサイルを改良して「複数の核弾頭を搭載できる」=多弾頭型ミサイル(RS-24)を開発し、発射実験に成功したというのが記事の内容です。ロシア軍ではアメリカのミサイル防衛システムをうち破る目的で、この多弾頭化を1990年代はじめから開発していたとされています。

多弾頭型を軍事の世界では「MIRV」(Multiple Independently-targetable Reentry Vehicle)=「複数個別誘導再突入体」なんて言い方をします。あるいは「多弾頭独立目標再突入ミサイル」とも。要するにひとつの弾道ミサイルに複数の弾頭(一般的に核弾頭)を装備し、それぞれの弾頭が違う目標を攻撃できるものだと理解されると分かりやすいでしょう。

ミサイル防衛技術が進む中で、MIRVも多弾頭の中に囮の弾頭を入れたりする工夫が研究されてきました。一つの目標に対して多数の弾頭で攻撃することにより、ミサイル防衛能力を越える事が出来れば、確実に核攻撃は成功します。ロシアはソ連時代から飽和攻撃の研究に熱心でしたし、質よりも量という対処法は、量よりも質のアメリカと相克にある思想ですから、世の中巧くできているものだと思います。

ただし、どこの国でもMIRVを開発配備できるかというとそうではありません。一つの弾頭を小型化しないことには配備できませんし、単純に同じ方向へ落下するのでは多目標への攻撃効果が高まりません。現在、MIRV化された弾道ミサイルを配備している国はアメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国のみというのも、そういう事情です。

ロシアは既に90年代には、R-36(SS-18)という大陸間弾道ミサイル(ICBM)の派生型であるR-36MでMIRVの実用化に成功しているので、今回のRS-24が搭載するMIRVは迎撃を困難とする軌道を描くような工夫がされているか、あるいはデコイを工夫して、迎撃能力を殺ぐように作られているかのどちらかだと思います。

ただ、ロシアのプーチン大統領は29日に、「米ミサイル防衛(MD)システムの東欧配備計画について、「欧州を火薬庫に変える」と述べ、軍拡競争を誘発する危険があると警告した。ロシアを訪問したソクラテス・ポルトガル首相との会談後の記者会見で語った」ように、RS-24の配備は少数ではアメリカのミサイル防衛網をうち破れません。多数のRS-24を配備するだけの経済力がロシアにあるのかという問題が、そこには横たわっています。もしも、ロシアの核戦力が無力化される時が来るとしたら、それに手をこまねいているのではなく、ロシアは先制攻撃に出て自国の安全保障を維持するという恫喝にも、私には聞こえる気がします。

この辺の事情は中国も同じです。中国では1970年代初期からMIRVを研究開発しており、80年代後半から、DF-21という単弾頭の弾道ミサイルを配備してきましたが、2002年に東風21号で初めてMIRV化の実験に成功したことを発表しています。この実験の成果として配備が始まっているDF-31Aは既に実戦配備がされているという情報もあるのです。つまりアジアからインド洋に書けての不安定な弧の線上でミサイル防衛網が完成することは、中国にとっても核戦力の無力化につながる訳です。その網の一部を日本が構成することに関して、硬軟織り交ぜた外交上の圧力が今後強まるのは避けては通れません。

問題は日本政府が長期的な戦略を策定して、安易な外向的妥協に走らないという事が出来るかどうかです。現実問題として、日本に長期的な国家戦略を策定させたくない連中が日本の政界や官界、マスコミにも大勢居ますから、その端緒をつけようとしている安倍政権を少しでも早く潰したいというのも判らないではないですが、此処で頓挫して遠回り出来るほど、日本の周辺は安全でもありません。

我々国民がどれだけ、この問題を真剣に捉えているかに、日本の平和は掛かってると思います。


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