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2007年5月24日 (木)

クラスター爆弾規制に見る思惑

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20070524k0000e030029000c.html

「ドイツは同爆弾を大量に保有する米露中がリマ会議に参加していない点を強調。米露中が参加し、国連の枠組み内にある「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」が、「議論の場に最適」と訴えるなど、条約の枠組みをめぐる議論が続いた。日本も、不発弾による被害は重視するものの、同爆弾の安全保障上の必要性を強調。CCWでの議論が「効果的」と主張した。」

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◎クラスター爆弾=集束爆弾=対人・対戦車用の空対地爆弾。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/cluster.htm
http://www.fas.org/man/dod-101/sys/dumb/cluster.htm

一個のクラスター爆弾(母弾)には、数個から数百個の子弾(爆弾や地雷)が収められています。投下後に空中で母弾が破裂すると、広範囲に多数の子弾が散布され、地上に被害をあたえる事の出来る仕組みを持った爆弾なのです。

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今問題になっているのは、この子弾の不発弾によって、被害を受けている人々をどう救済するのかという議論です。皆さんのご記憶にあるかどうかは判りませんが、イラク戦争終結直後の 2003年5月1日。毎日新聞のある記者が、この子弾の不発弾をバクダットでの取材中に拾い、記念品として持ち帰ろうとして爆発してしまったという事件がありました。この爆発で、空港職員が1人死亡、空港職員と一般人の計2名が負傷したのですが、一個の子弾の威力はこれ位はあるという事になります。(実際は米軍のMLRSによって散布された成型炸薬(M77子弾)を拾ったというのが軍事専門家達の間では有力です。)

こうした議論において、クラスター爆弾そのものを使用禁止にすべきという意見があります。国際的にはノルウェーが呼びかけた国際会議で、2007 年2月23日にはクラスター爆弾に対し2008年までに使用・製造・移動・備蓄の禁止と同型爆弾の廃棄や使用された爆弾の撤去や被害者のケアを目指すという「オスロ宣言」が採択されています。この記事の会議もこうした動きに連動したものだと思われます。

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誠に高邁な思想なんですが、世の中それを逆手にとって来る国があるものです。つまり自国だけは会議に参加せず、条約や宣言は批准せず、独占的にこの兵器を売り続け、使用し続けるのが平気という国です。このあたりの感覚は地球温暖化問題などでも出ていますのでよくお分かりと思います。逆に正直者は防衛的に使用する(要するに自国内で戦時に使うのみに使用を限定する)事も出来るのに、国際的な体面で放棄してしまいます。日本はその代表的な国のひとつです。なにせ対外的な戦争を憲法が禁じているのですから。

かつて対人地雷撤廃運動が盛り上がった時もそうでした。通称『オタワ条約』と呼ばれる『対人地雷全面禁止条約』によって、締約国(条約が発効した国)は対人地雷を廃棄し、10年以内で国内に埋められている対人地雷も廃棄することが義務づけられました。

世間では、それで地球上の対人地雷は全廃されたものとして理解された筈です。

しかし現実には、国連安全保障理事会の常任理事国5カ国のうち、米国、ロシア、中国の
3カ国はオタワ条約に加入していませんので、当然ながら対人地雷の撤廃をしていません。また、対人地雷の主要生産国である米国、ロシア、中国、インド、パキスタン、イスラエルも条約の締結国ではありませんので、いまだに生産を続けていて、世界の紛争国に供給を続けています。

つまりは、正直者が馬鹿を見るという現実を、まず我々は直視しないといけません。日本に限定して言えば、マスコミはこの問題に関して米国のみを批判したがりますが、中国やロシアを同列に批判しないでおくのは何故でしょう。クラスター爆弾の廃絶運動でも、主要な生産国である米・中・露に条約を批准させないで何の効果を生むんでしょうか。単に寡占状態にしてこの兵器の市場を独占させるのに手を貸しているに過ぎないのではないでしょうか。

また、世の中にはアメリカだけが悪いというお約束の人々が偽装して、こうした運動に参加してきたりもします。反米運動というのは単に忌米思想な人のみならず、それで得をする国々が背後で資金や人材を提供している運動であるのは、日本における原爆廃絶運動ですでに解説したところです。

(米国の戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局)
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Japanmilitarism/scrap_cluster_bombs.htm

繰り返しになりますが、クラスター爆弾を製造・販売・保有している主要国は、アメリカ、中国、ロシアの三国です。故に記事でもあるようにドイツが「米露中が参加し、国連の枠組み内にある「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」が、「議論の場に最適」」とするのも頷ける話です。

日本のような外征を自ら規制しているような国では、自国内でのみ有事に使用する兵器という観点で、こうした問題を捉えないと、そのうち小銃弾も暴発して死者が出るので禁止という議論になりかねないから要注意です。(日本では航空自衛隊がクラスター爆弾を装備していますし、陸上自衛隊も同じ効果のあるMRLSを配備しています)

何よりも、そうした世論を誘導する勢力の背後に、実は製造・保有している大国の影はないかを注意深く観察してみることをお勧めします。

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