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2007年5月16日 (水)

何気ないニュースから一掴み

米海軍は、次世代に配備される新型水上戦闘艦の開発計画として『SC21』(Surface Combatant for 21st Century)を準備しておりました。この計画は現在運用されているスプルーアンス級・キッド級駆逐艦(現在は中華民国海軍にて基隆級駆逐艦 (Kee Lung class)として活躍中 )及びオリバー・ハザード・ペリー級フリゲート艦などを一挙に更新する野心的計画でした。

(写真スプルーアンス級)

 実は、米国海軍は第二次大戦終了後に核戦略の一環として原子力潜水艦によるICBMの発射機能を開発し、SLBM搭載型の戦略原潜を多数配備する計画を推進しました。同時に空母の大型化と機関の原子力化も進めました。こちらは艦載機による核爆弾や核ミサイルの搭載を想定した構想でした。こうした大プロジェクトのあおりを受けて、なかなか更新予算の確保が出来なかったのが駆逐艦やフリゲートといった戦闘艦艇達です。

(写真はギアリング級駆逐艦)

 

先送りを繰り返す内に、米海軍の駆逐艦は第二次大戦後期に配備・発注された艦艇ばかりとなり、その改修の繰り返しで運用するのも限界というところまで追い詰められてしまいます。そこで安価で高性能で汎用性に富む船体を目指して開発設計されたのがオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート艦です。これを米海軍は『ハイ・ロー・ミックス』 (High Low Mix)構想と呼んでいました。オリバー・ハザード・ペリー級は『ロー』に相当する艦種として一括発注、大量生産により建造費を低く抑えるのに成功して約12年で51隻が就役しました。『ハイ』の方は先に書いたるスプルーアンス級です。キッド級はスプルーアンス級を基本にヴァージニア級原子力ミサイル巡洋艦の兵装と戦闘システムを組み合わせて設計・開発されたイラン発注の駆逐艦でした。イランの革命騒ぎで行き場を失ったため米海軍が買い取り配備したものです。(下の写真はオリバー・ハザード・ペリー級)

また現有のイージス巡洋艦の後継には、弾道ミサイル迎撃を付与され防空能力強化型の『CG21計画』が進められ、こちらも『SC21計画』と共に進められる予定になっていました。

 しかし予算上の壁は高くなる一方で、2001年11月に米海軍は『SC21計画』と『CG21計画』とを、可能な部分で互換性を持たせ、レーダーや動力機関、船体及び攻撃兵器等を共通化又はモジュール化して、DD21計画=DD(X)、CG21=CG(X)とするファミリー開発を目指すと公表しました。今のところ米海軍は、まずはDD(X)=ズムウォルト級ミサイル駆逐艦(Zumwalt class destroyer )の建造を現在進めている最中です。一部では2010年頃に1番艦ズムウォルト(USS Zumwalt, DDG-1000)が就役予定といわれています。(下の写真)

 しかしCG(X)の方は、まだ具体的な話は進んでいないようです。ミサイル防衛絡みで現行イージス艦の改修が急がれているため、予算がそちらへ振り向けられているのでしょう。また空軍で実用化され配備が予定されるABL(Airborne Laser)をにらんで、攻撃兵器にレーザー兵器を搭載するシステムの検討に、あるいは動いているのかも知れません。(下のイラストは90年代に公表された未来の艦艇の想像図ですので直接CG(x)とは関係有りません)

 

さて、そんな事情の中でこんな記事が先日流れました。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070513i116.htm

「北朝鮮による昨年7月の弾道ミサイル発射により、ミサイル防衛を担う日米のイージス艦の防空能力強化の必要性が高まり、常時提供を行うことにした。日本が弾道ミサイルで攻撃された場合、イージス艦は弾道ミサイルの追尾と迎撃に集中し、自艦の防御が手薄になるためだ。」

 この記事が出る少し前に久間防衛大臣が「航空自衛隊が運用するバッジシステム(自動警戒管制組織)の情報を、日本有事の際に限らず、平時にも米軍に提供すべきだとの考えを明らかにした。」という報道がありましたので、提供解禁をにらんでの発言だったようです。バッジシステムというのは、日本領空への侵入機を探知し、敵味方の識別後に、戦闘機や対空ミサイル部隊が迎撃する判断を行うシステムの総称です。

 米国には『北米航空宇宙防衛司令部』(通称ノーラッド(NORAD)と呼ばれています)という組織があります。冷戦期に核攻撃を早期探知するために設立され、監視網を北米上空の宇宙空間にまで広げているのですが、上記の記事は、その警戒網が北米から日本列島上空まで広がって来るのですよという意味にとると分かり易いと思います。(写真は宇宙空間で監視に当たる衛星)

MD(ミサイルディフェンス)に関して、日本独力での警戒網構築には、金も掛かれば組織も必要になります。なにせ宇宙空間に早期警戒用の衛星まで持つ必要に迫られます。その上、日本が運用する偵察警戒衛星だけでは当然ながら能力不足に陥るのは必然です。必要な時だけ米国に情報を貰うのも、場合によってはあちらの都合で拒否される場合もありえます。故に防衛省が「情報はギブ・アンド・テーク」という判断が、バッジシステム情報の米国への提供とつながる訳です。ならば、いっそうノーラッドに加わるのが手っ取り早い・・・というか、これは米国にも都合がよい話です。

(写真は発射される迎撃ミサイル)

恐らくは米国からMD絡みで協調態勢が持ちかけられたのでしょう。米国にすれば極東のホットゾーンの一部でも、その空域情報が24時間無償で手に入るのですから。しかも日本のバッジシステムには、日本が運用する各地のレーダーサイト情報以外にも、早期警戒機のモノが当然含まれてきます。空自が運用する早期警戒機(AWCS)は24時間態勢で日本海の隠岐上空で滞空しています。目的は朝鮮半島から黄海の一部までを電子の目で監視しています。その情報が手に入れば、在日米空軍の偵察への負担は軽減されますし、必要な場所や偵察地域へ、これまで監視任務に就いていた機体を振り向けることも出来ます。これは本国から機数を増派する手間も省くことにもつながります。つまり米国にとっても、損はないというところでしょう。

さて、ご紹介した記事には、こんな下りがありました。日米の(防空)「情報交換を緊密にすることで、防空能力を強化する狙いがある」。一読すると"どういうこと?"と思えるような内容ですが、これは日本海で常時警戒にあたる米海軍のイージス艦に対して、日本は集団的自衛権の行使が憲法上不可能なため、その護衛を直接行えないのだが、防空情報だけでも米国に提供することにしたという解釈をすると、色々と面白いことが見えてきます。                                 (写真は空自のAWCS)                                                       

 (MDの概念図)

イージス艦は本来、艦隊の防空のために建造された高性能なシステムを搭載した艦艇です。その最強防空艦を、空からの攻撃から守る必要が生じているというのはどういうことでしょう。MD任務に就いているイージス艦は迎撃時に、その能力を高空域に割いてしまうため、自らを守る航空攻撃に備えるのには不充分な能力しか持ち合わせないと読めば、こうした任務時にはイージス艦に護衛が必要だという意味にも取れます。しかも、その護衛はイージス艦であるのが望ましい。何故かといえば一隻のイージス艦が搭載できる迎撃ミサイルには限度があります。もしも護衛にもう一隻のイージス艦が居れば、そちらのミサイルも利用できるからです。もし日本海で米海軍のイージス艦がMDのために任務に就いている際、その数マイル圏内に海自のイージス艦が居たとしても、それは何の不思議もありません。そして海自のイージス艦が装備している迎撃ミサイルが発射された際、それを米海軍のイージス艦の電波が誘導したとしても、端から見る分には誰にも分かりません。MDを構築するシステムがあるいは集団的自衛権に風穴を明けるかも知れないという事かも知れません。

また、この記事は米海軍がMD網の迎撃部分で、世界中のどの海域ででも艦艇を派遣して、その能力を提供するという任務能力が本格的に稼働して来るという事をも示しています。逆に言えば、そうした任務を遂行する以上最初に書いたCG(X)の開発と配備は、その能力次第で大きく世界中の海軍を変えてしまう可能性を秘めても居ます。いわば21世紀のドレッドノート級となるかも知れません。             
(写真は米海軍のイージス艦アーレーバーク級)

 結局、北朝鮮の核配備危機は、極東の集団防衛体制化を促進させ、その動きに封じ込められると危機感を募らせた中国の軍拡を招くという、新たな冷戦を招いた事になりはしないでしょうか。この混乱に紛れて生き残るというのが偉大な将軍の妄想なのだとしたら、彼の野望を粉砕する戦争以外の外交を日本も展開する必要が有るように思います。また新たな核兵器開発に使われると分かっていて、日朝国交正常化の美名の元に賠償金名目で支払われるであろう数兆円を差し止めるためにも、「拉致問題解決無くして日朝国交正常化なし」という、今の日本政府が堅持している対北朝鮮外交の方針を、我々国民がちゃんと理解して支持をしていかねばならないのではと思います。また、国交正常化優先を主張する政治家達が、この数兆円を利権として捉えているということもお忘れなきようにお願いします。

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