« 今時のテロリスト | トップページ | 「ランドクルーザー」は世界を駆ける »

2007年9月 8日 (土)

責任者出てこい!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070907-00000307-yom-soci

「大阪市で昨年7月、市消防局に救急搬送を依頼した30代の妊婦が「満床」などを理由に19病院で受け入れを断られ、病院が見つからないまま自宅で出産していたことがわかった。」

奈良の妊婦が流産した一件以来、「実は・・・」という後追い取材の結果が各新聞社などで報じられているので、まずは、それらの一部をご覧下さい。

千葉市の30代の妊婦が昨年、夜間に下腹部の不調を訴え119番したが、救急隊の照会に同市内などの16の病院が受け入れを拒否し、最終的に搬送された病院で、切迫流産と診断されていたことが5日、分かった。今年に入ってからも別の30代の妊婦が11回受け入れを拒否され、約1時間にわたり搬送できなかったケースがあったという。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070905-00000184-jij-soci

千葉県市川市で昨年8月、妊娠初期に破水した20代の妊婦が11カ所の病院から受け入れを断られ、12番目の病院に搬送されるまで、119番から約1時間20分かかっていたことが7日、分かった。同市では昨年7月にも、破水した30代の妊婦が「空きベッドがない」などを理由に9カ所から断られ、病院搬送まで約1時間10分かかったケースがあった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070908-00000095-san-soci

仙台市内で昨年2月、救急車で夜間に搬送された10歳代の妊婦が、電話での受け入れ要請を断られ、約2時間後、18か所目の病院に収容されていたことが7日、わかった。市消防局は、「妊婦にはかかりつけの病院がなく、当時はどこの病院も込み合っていた」としている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070907-00000115-yom-soci

図らずもこの三つの報道で判るのは、「空きベッドがない」というのと「かかりつけの病院がない」というキーワードです。

まず、「空きベッドがない」のキーワードを調べてみると、こういうことが判りました。日本産科婦人科学会によると、出産を扱う施設は、1993年には全国に約4200カ所あったものが、2005年には約3000所に減少しています。なるほどベッドの数は確かに減っていました。その上、産婦人科医数も2004年に約10600人で10年前の1994年から比較すれば7%の減少にあるというのですから、ベッドもないが医師もいないという医師不足も確かなようです。

ただ、単純計算では10600÷3000=3.5人ということになりますので、数字の上では、ひとつの産科に3.5人の産婦人科医がいることになっちゃいます。これが多いのか少ないのか素人には判りにくいのですが・・・。

そこで調べてみると(2002年現在)、小児科は全国に14,481人、内科医は74,704人、外科医は23,868人と産婦人科医が少ないのは確かなようです。これをアメリカと比較すると産婦人科医は37,057人ですから、国土面積や人口に違いはあるとしても格段の違いです。

よく産婦人科医の減少は、過酷な勤務と訴訟リスクと言われますが、訴訟社会のアメリカでもこんなに産婦人科医がいる以上、訴訟リスクは病院側の対応次第という気もしてきます。

過酷な勤務の方は医師の偏在が大きな理由として考えられます。厚労省は都道府県ごとに、リスクが高い妊産婦や新生児を24時間受け入れる「総合周産期母子医療センター」の整備を目指していますが、そのために産婦人科医が集約され、地域の産科医が不足しているおそれに関してあまり報じているところがないようです。(話は違いますが小児科医もいずれ不足が表面化すると思います。それほど危機的状況です。)

こうした事態をどうしたらよいのでしょう。私は他の医療でも同じ問題を抱えていますが、高度医療病院には一般外来は必要ないという原則を、ちゃんと医療行政側が音頭をとって仕組みとして維持することだと思います。

判りやすく言うと、鼻風邪程度で大学病院へ受診に行くなということです。医療制度として、初診は地域の診療所や医院。ここで医師が治療により高い程度の病院が必要と判断したら、地域の中度医療病院への紹介状を書いて貰い、患者は受診する。その上で、さらに高度な医療が必要と判断された場合に、県単位で置かれている高度医療病院へという三段階の棲み分けを貫かない限り、限りある病床数を必要な患者に提供できる筈がありません。この原則を産科でも確立することがまずは行政に科せられた最優先事項で、ネットワークシステムの構築とか言うのはその原則が動き始めてから有効性は活かされるというものだと思います。奈良県の場合などはシステムの構築に、こうした視点をわざと入れないで実績作りのために勇み足で稼働させたから使い物にならなかったと云えるでしょう。

さて、次のキーワード「かかりつけの病院がない」の方を見てみましょう。通常のお産というのは、まず妊婦が妊娠後に定期的に健診のため産科に通うというのが、この国の常識とされています。そうすれば、陣痛が始まった時に入院する医療機関は予め決まっていることになるので、こんなたらい回しなどおこる筈もないというのが産婦人科医団体の意見のようです。確かに橿原市のケースでは、妊婦は産科にかかっておらず、それで消防が受け入れ病院を探したという報道でした。要するに産婦人科に救急外来はあるけれど、それは「かかりつけ」という常連さんのために開かれていて、一見さんには余裕のある時しか開かれないと言っているのと同じです。

皆さんご存じのように、国民健康保険や団体健康保険の加入者でも、妊婦は保険適用外(出産に伴う健診や入院費用)になっています。そのため出産後に加入している保険団体に申請すれば、出産一時金などの名目で出産費用の何割かは戻ってくる救済策が設けられているのですが、例えば契約社員やパート勤めなどで、身分が不安定な独身の女性が出産する場合、健診料や出産費用が賄えるのかという面では、医療制度はまだまだの面があります。確かに少子高齢化が危惧されて、自治体によっては「妊婦医療費助成制度」を設けて、検診以外の保険適用分は届出が出された日から出産した翌月の末まで医療費が無料となる支援策を持っているところもありますが、あまり世間で知られているとも思えません。

しかも、こうした制度などは、かかりつけ医や保健婦さんなどが教えてくれないと妊婦には判りづらいでしょうし、第一子の場合は誰でもこうしたことに初めてなので、そんな制度があるなら事前に引っ越そうかとかは考えも及ばないかも知れません。妊娠したら、まず市役所へ行って下さいともなかなか言われませんし。

お金のことだけで言えば、健保に無加入な人の多さが問題になっている現状では、そうした人が妊娠して出産する場合、ギリギリまで産科に受診しない場合も考えられます。保険料が払えないんですから、健診費用も払えそうもないでしょう。まして出産費用など払える訳もない。そういう人が救急車を要請したら、受け入れた病院は医療費を支払って貰えないリスクを抱え込むことになります。断られた理由の一部はこうしたことからではないかと私は推測しています。

一昔前の善良な日本だったら、それでも人命優先で受け入れていたため、在日の外国人がワザとそういう手で医療費を踏み倒すケースが問題になっていました。では日本人ならどうするのか。最近の大きな病院にはケースワーカーが大抵常駐しています。看護師を通じて面談を申し込めば相談に応じてくれるのですが、恐らく生活保護を受けなさいという結論になるだろうと思います。入院している期間のみ限定の生活保護なら比較的、市役所も対応してくれるようですから。生活保護では医療は無料になりますので、支払いは市町村が立て替えてくれるという具合です。

こんな話はレアーケースじゃないのとお思いの方には、こんな数字はどうでしょうか。大阪市消防局によると、昨年1年間で産科に搬送されたのは2673人。このうち、かかりつけ病院など搬送先が決まっておらず、119番通報後、受け入れ病院を探したケースは135件もあったそうです。

では、どうしたらいいのでしょう。少子化の対策に税金を投入するとしたら、先ほど例に出したように「妊婦医療費助成制度」を国の医療制度として確立し、妊娠した女性は市町村に届け出て母子手帳を取得した瞬間から、妊娠と出産に関わる間の医療費は無料とする、いわば母子手帳が保険証になるという制度で対応するしかないのでは。もちろん、シングルマザーであろうが関係なしの、日本国籍を保持する者に普くで。

それと失業保険も、契約社員やパートなどの女性が妊娠を理由として退職した場合、例え加入日数が半年でも、安心して出産と育児をしてもらうため、1年間は失業保険を給付するという特例を設けるべきでしょう。また出産後の再就職支援には、厚労省と協力して保育所への入所支援も職安で行えるようにするとかいう、出産後の支援も行っていかないといけないのではないでしょうか。

出産率が減少したと嘆くばかりで、こうした支援策をまともに考えない、国会や厚労省というのは、いったい何処を向いて公務をしているのか、考えると憤りますね。

« 今時のテロリスト | トップページ | 「ランドクルーザー」は世界を駆ける »

コメント

 この提案を「首相官邸」へ送付したら如何でしょうか?
 実を言うと、この件を拝見させていただいたのは安倍首相が辞意表明をする直前で、コメントを書こうとしていたのですが、躊躇してしまいました。
 しかし、この件は失業保険行政や健康保険行政は本来厚生労働省の所管ですが、事務を主管する官僚はおそらく「根拠がない」とか「前例がない」と言って二の足を踏むでしょうね。少子化対策を内閣府が各省庁に働きかけても各省庁の所管する業務に少子化関係の項目を立てない(業務重複ができないので立てられない)現状では無理というものです。こういった現状を打破するのが政治家の使命ということでしょう。政治による官僚の指揮(広い意味でのシヴィリアンコントロール)が必要ということです。
 今回の場合は内閣府の「少子化対策担当国務大臣」が「厚生労働大臣」に働きかけることが重要です。福田内閣の関係大臣の顔ぶれを見ていて以上の件について考えてみたのですが、はっきり言って望み薄と思いますね。野党側がこれについて突っ込んでくれば動き出すかも知れませんが、それも期待できないのですから・・・。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/97581/16382725

この記事へのトラックバック一覧です: 責任者出てこい!:

» 手作りのベビーシューズを作ったら赤ちゃんとの絆が深まる? [里帰り出産 出産準備に 妊娠中に赤ちゃんとの絆を作りたい!]
レース編みで手作りのベビーシューズをつくっていると、ふんわり、やさしい時間が流れると思う。 [続きを読む]

» 肩叩きされましてね [リストラ]
困りました。スパムのつもりはないんですけれど、考え方は人それぞれですからしょうがないですね。 [続きを読む]

» 妊娠初期 [温泉宿泊]
流産について。妊娠中どの時期にも流・早産はおこりますが、妊娠2~3ヵ月の流産が圧倒的に多いようです。 早産 妊娠6ヵ月の半ば(21週)までに胎児が出てしまうことを流産、 一週から10力月初め(36週)までに出てしまうことを早産といいます。... [続きを読む]

» 小児救急医療 [小児救急]
小児救急は少子化が進む中、 小さい子供を持つ家庭を守るためには、 常時体制を整えておく必要があります。 [続きを読む]

« 今時のテロリスト | トップページ | 「ランドクルーザー」は世界を駆ける »

2015年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト
無料ブログはココログ