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2007年12月13日 (木)

制海権を意識しているか?

071210nj3764116

「東アフリカのソマリア沖で、日本の「ドーヴァル海運」(本社・東京)所有のケミカルタンカー「ゴールデン・ノリ」(6253トン)が海賊に乗っ取られた事件で、同社は12日、タンカーと韓国人、ミャンマー人ら乗組員22人が解放されたと発表した。AP通信は負傷者はいない模様と報じた。タンカーは10月28日に襲われた。AP通信によると、海賊は人質の殺害を予告し、100万ドル(約1億1100万円)の身代金を要求。同社は「米英海軍の協力を得つつ、解放に向けた交渉を続けた」と説明したが、身代金の受け渡しについては「コメントできない」としている。 」

http://mainichi.jp/select/world/news/20071213ddm012030010000c.html

071212n5200f001 解放されたタンカー「ゴールデン・ノリ」はアメリカ海軍(第五艦隊所属のUSS Whidbey Island (LSD 41) )の艦船に護衛されながら現在アデン湾を移動をしている最中です。

http://www.cusnc.navy.mil/articles/2007/253.html

あまりこの事件が日本で報道されなかった理由は乗組員に日本人がいないという点だろうと思われますが、結構深刻な問題なんですよ。

まず、海賊に襲われた日本船が100万ドルの身代金を払うというのは、東アフリカやインド洋、南シナ海などの海賊にとってはまさに福音でしょう。武装もしていない日本船が毎日のように通るし、タンカーなどが多いので船会社は乗っ取られても知らぬふりは出来ません。また保険に入っているでしょうから、海賊との直接交渉はロイズなどの海賊などとも交渉する事に長けた第三者が介在するし、身代金の全額かあるいは一定額は保険でカバーされる可能性も高いので、コスト面で高くつく警備要員の同乗よりはと安易に交渉で解決する方法を選びたくもなります。

国連海洋法条約(「United Nations Convention on the Law of the Sea」1994.11.16)で
定義されている海賊行為の要件は、

①私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客の行為であること 
②行為の目的が私的であること 
③公海を含めていずれの国家の管轄権にも服さない場所にある船舶・航空機・人又は財産を対象とすること 
④行為類型は暴力行為・抑留又は略奪行為という典型的な作為(真正作為犯)であること 近代国際法の基本原則の一つである公海自由の原則を侵害する

これがもしもイスラエルのタンカーだったらどうでしょう。恐らく身代金の交渉は進めるでしょうが、身代金を支払うにしても、そのあとで海賊を特定して報復に出るのは確実です。正規の軍事作戦は採らないにしても、特殊部隊などによる狙撃や爆弾、あるいは事故に見せかけて海賊達は殺害されていく可能性があります。この辺りは映画『ミュンヘン』を見た人なら納得だと思います。だから、イスラエルのタンカーは海賊だって襲いません。

これが英国や米国のタンカーだったらどうか。地中海や紅海、アラビア湾に展開する海軍艦艇による捜索、発見、SEALやSBSによる制圧作戦などが発動されてもおかしくありません。本来欧米の海軍は自国の商船の保護を任務のひとつとしていますから、当然の行動ですし、これは国際法上も認められた警察活動でもあるからです。なにせ近代国際法の基本原則のひとつは「公海自由の原則」なんですから。

海賊は昔からいる海のテロリストです。本来なら、日本も<strong>オイルロード</strong>のある中東やインド洋、南シナ海などで、米英海軍と共に自国商船の保護を任務として、共同で作戦を恒常的に展開しないといけなかった筈ですが、憲法上の制約からアメリカ海軍任せでずっと来てしまった訳です。<span class="large">故に日本人は制海権があるからこそ、食料や燃料が世界中から船によって運ばれてきて生活が成り立っているという意識が大変希薄です</span>。

民主党は制海権活動関わるテロ特措法を政争の具にしてる訳ですが、恐らく党首の小沢氏からしてそういう観念は念頭にないでしょう。社民党のある議員は給油活動を停止してひと月経ったが何ら支障はないではないかと国会で政府を追及していましたが、当然制海権などという高尚な論理は理解の範疇にはないでしょう。

070318n5961c262 日本の国力で太平洋全域を海軍力によってコントロールことは不可能です。ましてや世界中の海となると不可能どころか無理・無茶の類になります。だからこそ、米海軍やNATO海軍と協力できる範囲で支援を続け、艦船を派遣するのは、即効性や即時性はけしてありませんが、長年の積み重ねによる関係の構築が日本商船の航行安全に寄与するのは確かです。

ですから、政府もシーレーンの恒常的な安全確保を日本の政策として掲げ、それに基づく活動として、対テロ活動の支援を国民に訴える努力が必要だと思います。もっとも、政府、外務省、経済産業省、自民党だって、制海権を意識してる人は少ないと思います。

結局は、燃料も食料も途絶して、半年後には備蓄米も食い尽くしてしまい、餓死者が一千万人近く出るという所まで追い詰められないと、目に見えない制海権の問題なぞ意識しようともしないのでしょう。でも、それからでは遅すぎるんですよ。66年前、日本はアメリカ海軍の飢餓作戦で、これと同様の目に遭わされていた筈なんですが、学校でちゃんと歴史を教えていないつけがこういうところに出ている気がします。

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コメント

 日本人は目先の利益には聡いけれど長期的な視点というか、過去から学ぶことができないからねぇ・・・。外務省や経済産業省ばかりか防衛省だって似たようなものですよ。

異邦人さん、コメント有り難うございます。

長期的なビジョンのない日本の国家戦略が問題だ!とかよく言いますが、実は肝心の国家戦略がないのが問題なんですけどね。食料にしろ燃料や資源にしろ、海路でやってくるものが大半なのに、海自はいまだに商船の護衛を行う演習すらやったことはないんですし、それを公海とはいえインド洋なんかでやるのは違法だというアンポンタンがいたりするんですから。食糧輸送が途絶してから、何とかしないとと海自を批判するしか能がないマスコミも含めて、国家としてこの国はどう成り立つべきなのかを議論する国政の場が利権争いだけの場になってますし。暗愚な国に何時まで住むのか考え込みたくなります。

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