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2008年3月

2008年3月 4日 (火)

日本の船は誰が守ってくれるの?

 

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080304-OYT1T00062.htm

 

「日本の調査捕鯨船「日新丸」が米国の環境保護団体の船から液体入りの瓶などを投げつけられた問題で、海上保安庁は3日、傷害容疑での捜査に乗り出した。日新丸が撮影したビデオ映像を分析し、実行犯の特定を急ぐ。」

 

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例え犯人が特定されたとしても、シーシェパードの船は日本船籍でありませんから(オランダ船籍)、日本に捜査権があるとはいえず、ICPOを通してオーストラリアやオランダなど関係各国に捜査や逮捕を依頼するという程度のことしかできません。これは例え、それが殺人であっても同じ事です。

 

今回、反捕鯨団体側は声明で「無害の薬品を用いた『非暴力的』行為により、違法な捕鯨を妨害した」と主張した。同団体は、1月にメンバーが「第2勇新丸」に乗り込んだ際に、追尾のための発信機を設置したとも述べています。つまり日本のでっち上げだということを暗に仄めかしてると見ていいでしょう。

 

一方、オーストラリアのスミス外相は3日に声明を出して、「公海上で他者を負傷させるような行為を強く非難する」としました。しかしこれは外交儀礼的なジェスチャーです。オーストラリア政府は先月末に巡視船による調査捕鯨の監視活動を終了する際、「オーストラリア政府は今後、深刻な事態が生じても直ちには対応できない」と表明していました。反捕鯨の立場を取る現在のオーストラリア政府は、今月1日に捕鯨を伴わない新たな調査活動案を国際捕鯨委員会に提案する考えを示し、日本の調査捕鯨を中止に追い込む姿勢を強めているのですから、取り締まる気など端から無いのです。もちろんオーストラリアの世論もそれを支持しています。

 

調査捕鯨が日本の国益に適う政策の一環であるならば、中途半端な対応をせずに、巡視船の護衛をつけるべきです。海保には「しきしま」という長期行動が可能な世界最大の巡視船があります。ヘリも2機搭載可能ですし(小型なら3機可能)、武装も巡視船としては強力です。

 

Shikishima

 

では、海保は公海上でシーシェパードをどういう罪で取り締まるかですけれども、それは海賊として扱うのが一番適法性が高いと思われます。

 

『海洋法に関する国際連合条約』(以後、国際海洋法条約と表記)には、こうあります。「公海又はその上空などいずれの国の管轄権にも服さない場所にある船舶、航空機、人または財産に対して行われる、私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客による、私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為、及びそのような行為を煽動又は故意に助長するすべての行為を海賊という。」(第101条)

 

これが国際的な法律上の「海賊の定義」です。

 

Flag

 

さらに『国際海洋法条約』には「海賊を行った者の国籍及び海賊船舶の船籍に拘らず、すべての国が取り締まり及び処罰を行うことができる。拿捕を行った国は、自国の裁判所において課すべき刑罰を決定することができ、また、善意の第三者の権利を尊重することを条件として、問題となる船舶、航空機又は財産について執るべき措置を決定できる。」(第105条)という取り締まりの規定もあります。

 

さらに場合によってはその船の拿捕も可能です。「海賊船舶・海賊航空機等の拿捕は、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所において、軍艦、軍用航空機その他政府の公務に使用されていること明らかに表示され識別されることができる船舶又は航空機で、そのための権限を与えられているものによってのみ行うことができる。」(第107条)

 

ただし、今回のような場合、オーストラリア政府が拿捕に反対して海軍艦艇を派遣して来る可能性があります。引き渡しを求める権限はあちらにはありませんが、外交交渉を行って解決する間の足止めに使われるでしょう。その外交交渉の中身は恐らく海賊行為の解釈をめぐる議論となるでしょう。つまりは議論の平行線をあちらは狙うということです。

 

こんな場合に、日本はその海軍力を派遣して、外交交渉が対等の条件で進められるようにしないといけません。決裂後には安全に移動させるだけの条件を整えるという意思を相手国に表示しないといけないからです。国籍が明示されている国の所有である軍艦や公務船を他国の軍艦や公務船が拿捕することは、国際法上出来ません。何故ならそれらの船は所有国の国土の延長だと解釈されているからです。つまり拿捕の強行は侵略行為と見なされても仕方が無く、それは最悪の場合宣戦布告と同等に取られる可能性のある行いとなるからです。

 

しかし、こういう知識が外務省にあるかといえば無いに等しく、防衛省にもないでしょう。防衛省は元々日本国土への侵略に対応するために組織されたお役所で、海の上で治安の維持にあたるお役所は海上保安庁なんですから。その海上保安庁は東京消防庁よりも少ない人員しか居ない小さな組織で、領海の警備ですら完全にはおこなえていないのに、遠く南氷洋まで船を出す余裕がある訳じゃありません。仮に海自が行くにしても海賊退治の経験がありませんし、そういう訓練も最近始まったばかり。さらに世論がそれを支持するのかも未知数です。

 

そして何より、政府にそんな根性があるかどうかも謎ですし。こうした公海上での自国の民間船の航行の安全を保障するために、各国は海軍を備えているのにです。世界を相手に自由な通商を理想とするアメリカは、だから世界最大の海軍を保持して、自国船への海賊行為や航行の妨害などに備えているのですけどね。

 

この事件で日本人はちゃんと認識しないといけません。公海上での犯罪には日本は無力だということをです。海賊に日本船が襲われたとしても、それは今回の船と同じなのです。日本は世界の中でも屈指といえるほど、海運によって成り立っている国です。食料のエネルギーも資源も、大半は海の上を通って日本にやってきます。

 

その海の治安を誰が守っているのか。

 

少なくとも日本は日本の排他的経済水域内(EEZ)でしか守りに就いていません。

 

最後に、今回の記事で、調査捕鯨船に海上保安官が乗り組んでいたことが判明しました。

 

「これまでの妨害活動と違い、今回は海上保安官が乗船中の船が狙われ、飛び散った液体が保安官2人の目に入って負傷したため、事態を重視した。環境保護団体に船籍を与えたオランダなど関係各国に対しても捜査共助を申し入れる方針。海上保安庁は妨害活動を警戒した水産庁の求めに応じ、今回の調査捕鯨で初めて海上保安官を同行させていた。 」

 

本当は30名から50名程度の保安官が乗り組んで、催涙弾による制圧行動などに出るべきだったのかも知れません。

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