« 2008年8月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年9月

2008年9月18日 (木)

誰が本当に悪い奴なのか

「米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの支援要請には応じなかった米連邦準備理事会(FRB)が、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に850億ドルの融資を行うと表明したことで、FRBの姿勢の一貫性に疑問を呈する声も出ている。また融資を求める企業がこれから多数出てくる可能性が高まった、との指摘も聞かれる。経営難に陥った企業を破たんさせるのか、規模が大きく影響が甚大との理由で救うのか。その判断基準をめぐって、議論を呼びそうだ。」

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-33801120080917

FRBがこの春ごろから実施した金融セクターに対する支援額は、

①ベアー・スターンズ救済関連:290億ドル

②米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)救済関連:2000億ドル

③米連邦住宅局(FHA)救済関連:最大3000億ドル

④AIG救済関連:850億ドル。

⑤その他の救済策や融資関連:2860億ドル、

その総額は9000億ドルを上回ると記事にはあります。

しかし、よく支援先を眺めてみると、「米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)」と「米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)」、米連邦住宅局(FHA)という住宅金融関係に5000億ドルもの公金を注入してるのが判ります。

この「ファニーメイ」と「フレディマック」というのは、両方ともに純然たる民間企業ですが、政府が後押しをしている「政府援助法人」(Government Sponsored Enterprises=GSE)といわれるもので、金融市場ではインプリシットギャランティー(implicit guarantee=言外の保証)といわれる別格扱いを受ける信用度の高い債権として知られていました。要するに政府がバックについているので破綻することはないと思われていたのです。

金融機関はよく信用によって成り立っていると言いますね。世界一の経済大国の政府が支援する金融法人は、信用度においてずば抜けて高いというのは誰もが信じるところです。だから信頼度も別格だったのです。しかも民間企業故に、利回りなどは、国債や地方債などよりは高めに設定して販売されていましたから、「ファニーメイ」と「フレディマック」が発行する債券は、ローリスク・ハイリターンという実においしい金融商品として存在してたのです。そういうあり得ない手法を米国政府が許していたのも、表向きには住宅ローン市場に資金を供給して、米国市民が住宅を買いやすくするという錦の御旗があったからです。だから、市場では人気がありましたし、証券会社や投資顧問会社などにしてみても、投資家に対して「安全なのに利回りがとてもいい商品です」と推奨する商品だったのです。そして、そのことが現在の混乱の大きな原因になっているのがよく判ると思います。

現実に米国政府は「ファニーメイ」と「フレディマック」を救済しました。しかし金融市場の混乱は収まりませんでした。米証券大手リーマン・ブラザーズは9月15日に、連邦破産法適用を申請して経営破綻しましたし、証券大手メリルリンチは米銀バンク・オブ・アメリカとの合併吸収されました。米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は前述の記事にあるように850億ドルの公金注入で破綻を免れました。債権を売った方よりも買った方がサブプライム関連の巨額損失処理が重荷となっていることがよく判ると思います。

じゃ何故、サブプライム関連の巨額損失なんてものが発生したのでしょう。

「インプリシットギャランティー」という暗黙の政府保証によって、資金が簡単に集まり、その豊富な資金を使ってどんどん住宅ローン債権を買い取ったり、保証をつけたりして、この10年ほど「ファニーメイ」と「フレディマック」は景気よくやって来ました。無論、住宅ローン市場にどんどん資金を供給していくことがこれらの金融機関の役割ですから、誰もローリスク・ハイリターンの矛盾や危険性を認識してこなかった(政府の保障がついてるからと)のですから、それこそ大威張りで資金ををばら撒きまくって来た。優良レートで貸せるところには「ファニーメイ」と「フレディマック」が既に貸しまくってるんですから、民間の金融機関が住宅金融商品としてサブプライムローンという奇策を考えるしかなかったです。

ようするに住宅ローンに関して民間銀行にちゃんとした商品が出来てきたら「政府援助法人」である(つまりはそんなに儲けなくてもいい)「ファニーメイ」と「フレディマック」に対して、政府は資金の引き上げなどを指導する責任があった筈なのです。サブプライムローンという奇策を危険視して、その是正をする努力を怠ったともいえます。

では、どうしてそうはしなかったのか。米国では「ファニーメイ」と「フレディマック」に環流した巨額な資金の一部が政治家などに流れたのではないかという憶測が出てきています。ちょうど郵貯の巨額な預貯金が財政投融資の都合のよい財布にされてたように、この話は少なからず真実を突いているかも知れません。

そういう目で見ると、この意見はあまりにも稚拙に思えてきます。

    ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのノウリエル・ロウビニ教授は「FRBはリーマンには断固とした対応をとるふりをしながら、2日後には別の企業を救済している。損失を社会全体で負担するシステムが続いている」と指摘。自動車メーカーや航空会社など、経営難の企業が今後支援を求めてくることは確実と述べた。

リーマン・ブラザーズやメリル・リンチといった大手証券会社は、一部の投資家やお金持ちの資金を運用して利益を生み出し、その利鞘を稼ぐのを仕事にしています。此処を救済すると言うことは、けして国民全体の利益に適うとは言えません。唯一の名目は金融市場の混乱を治めるという理由ですが、この騒ぎが収まって来ると、それだけでは政府は批判を強く受けることは必定です。故に、こちらは切り捨てても国民全体の支持は得られると判断したのだろうと思います。

逆にAIGが破綻すれば世界中の多数の企業に損害が及ぶほか、その保険に加入している米国民や、世界中の国々の人々にも影響を与えかねません。保険という資金力の裏付け無しには成立しない金融商品のイメージを守るためには、公金を投入するしかなかったといえるでしょう。

とまあ、此処までが建前。そういう庶民を救うというFRBの判断の裏で、混乱の元凶であるはずの「ファニーメイ」と「フレディマック」は公金で救済され、市場に出回った債権は曲がりなりにも金融商品としての価値を保ちます。一方でサブプライムローンは紙くずとなって無価値となり、そのツケは庶民にまわされます。だって公金投入で民間企業を救済するんですから。

しかし、国民の方は雰囲気として、金持ちの資金運用で儲けていたエリート面したリーマン・ブラザーズやメリル・リンチが転けて、密かに快哉を叫び、AIGが救済されて政府は国民の味方のように思わされてるのではないでしょうか。

本当は、この混乱の責任者は誰なのか。何故米国政府は「政府援助法人」という裏付けを武器にして放漫な経営に走った「ファニーメイ」と「フレディマック」を放置したのか。という二点を追及していかないと、恐らく一兆億ドル以上の税金が金融システムの安定化のためという名目で闇に消えていくことになるでしょう。そして、その数パーセントでも環流させて政治資金にしようとしても、もう誰もそれに気付かないでしょう。

このページは xfy Blog Editor を利用して作成されました。

« 2008年8月 | トップページ | 2008年11月 »

2015年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト
無料ブログはココログ