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2009年1月19日 (月)

『非対称戦争(asymmetric war)』

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090119k0000e030062000c.html

NHKのラジオのニュース番組で、パレスチナ側の死者の数と、イスラエル側の死者の数の不均衡を挙げて、イスラエルの暴挙という解説をする学者がいま した。私は面妖なことを言うなと、その時思いました。如何にも平等が全ての日本人社会でしか通用しないお話しですが。実は人口の少ないイスラエルでは10 名の死者は他国の100名に相当するという話があります。どんな戦争であれ何万人の死者を出したらイスラエル軍は崩壊してしまうどころか、国自体が立ち行 かなくなるという思想がイスラエルでは強いというのも、この学者は知らないのか、ワザと無視してるのかではないかと思います。

どうしてそんなことになるかと言えば、国民皆兵のイスラエルでは、現役兵は最小限の数で編成されていて、労働力として社会にいる予備役の人達が必 要に応じて動員される仕組むだからです。かつて20年程前にベイルートへ進撃した時には、1年以上の遠征になった結果、ホテルのボーイが老人(元社員)に なったり、バスの運転手も老人になったりしたそうです。無論男女平等のこの国では女性にも徴兵はあって、戦場へ多くが出て行きます。そういう国ですから大 量の戦死者は社会の構成に多大な影響を与えかねません。

ですからイスラエルは勝てる戦争しか行いません。すくなくとも周辺国が戦争を仕掛けてこない限りはですが。

今回のガザ地区侵攻で、イスラエル軍はハマスの拠点を壊滅に追い込み、エジプト国境に掘られたいくつものトンネルを破壊して、兵器の流入を止めるという所用の目的を達成したことで停戦のテーブルに着く用意が出来たと言うことなのでしょう。 さらにイスラエルでは来週が総選挙です。仮に予定外の損害でも出してしまえば与党は苦しい立場に追い込まれます。またアメリカの新政権に対する配慮など政治的な側面もあるのでしょう。

一方でハマスも、ガザ地区の住民に2000人規模の死傷者が出たことで、国際社会がイスラエルを非難し、ハマスの責任論がそう高まらない内に停戦 のテーブルにつけたことはある意味勝利として考えてもよいと言う判断をしたと思います。それに、これまでハマスをテロ組織として無視してきた国際社会が、 ハマスに停戦を呼びかけるチャンネルを開いたことは棚からぼた餅的な利益をもたらしたと感じてるでしょう。それまでパレスチナの正統な政府として国際社会 が認知していたのはファタハでした。アッバス議長率いる暫定自治政府はこのことでその影響力を低下させ、パレスチナに二つの勢力があることをイスラエル政 府にも認知させたに等しい停戦の合意が完成することは、ハマスにとっては大勝利と言ってもいいでしょうから。

つまりハマスは、ガザ地区のパレスチナ市民の命を踏み台にして、自らの組織を国際社会に認知させることが出来たのです。無関係の市民の中に潜み、 市民を犠牲にすることを厭わないというのは、まさにテロ組織の論理なのですが、そのテロ組織をそれでもパレスチナの解放者と応援しなければならないガザの 市民の苦渋も少しは考えてみたいものです。

今回のように正規軍(イスラエル軍)とハマス(非正規軍)とが戦うことを『非対称戦争(asymmetric war)』と言います。イラクでアメリカ軍が苦戦しているのも、この戦いです。

つまり、日本ではやっと平和が戻ったと胸をなで下ろす人も多いのでしょうが、ガザ地区にハマスがいる限りが同様のことが繰り返されるだけです。

実は何にも解決していない(?_?)です、この話は。停戦はガラスの上にあるも同然なんです。

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