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2009年1月22日 (木)

「あたご」の事故にひとつの判断が出た

http://mainichi.jp/select/today/news/20090122k0000e040072000c.html?link_id=TT005

「海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が昨年2月に衝突した事故の海難審判で、横浜地方海難審判所(織戸孝治審判長)は22日、あたごの所属 部隊、第3護衛隊(当時は第63護衛隊)に対し、安全航行の指導徹底を求める勧告をするとの裁決を出した。審判所は「あたごが動静監視を十分に行わず、清 徳丸の進路を避けなかったことが事故の主因」と判断した。裁決が確定すれば、海自組織に対する勧告が初めて発令される。裁決は一方で、事故時の当直士官、 長岩友久・前水雷長(35)ら個人4人への勧告は見送った。」

実際に事故に関しての操艦を担当した当直士官、後潟桂太郎航海長(36)と安宅辰人船務長(44)と長岩友久・前水雷長(35)、それに艦長の舩渡健(53)に関しては、個人としての責任は海難審判では問わないが、事故を起こす原因となった安全航行に関する問題での指導不足を重く見て「あたご」が所属する護衛隊に勧告をだすという判断をしたという記事です。

海難審判所の勧告は、元々海難審判自体が、海難事故の原因を究明して、同じ事故を繰り返さないという目的のためにあるので、こういう話になってるということです。ただし勧告を受けて是正を行わないで放置しておけば、もちろんいけない話です。特に海上自衛隊は国の機関ですから、他の船舶の模範とならないと行けない立場でもあるんですから尚更です。

実は海難審判の審理の過程で、昨年の9月12日に開かれた第3回海難審判で、あたごが所属する第3護衛隊(京都府舞鶴市)を代表して出廷した前司令の末次富美雄一等海佐(52)が、安全運航の教育指導の在り方を問われて、「艦長に任せていた。反省はある。これまで出入港時だけだった部隊による運航指導などの調査を通常航行時でも行う。また、艦橋とレーダー監視を担当する戦闘指揮所(CIC)との連携不足については当直員に能力や知識はあるが、緊張感がなかったとの印象だ」と証言。組織の責任を認める踏み込んだ発言をしていました。

ですから、今回の「裁決」はある程度予想された範囲内の裁定だったといえると思います。

ただ、本当は海難審判所がさらに踏み込んで置かねばならなかったのは護衛艦の乗員定数の問題だったのではと思います。

「あたご」型は満載排水量1万トンを越える大型の軍艦ですが、乗員定数は300人。実際は280人程度しか乗っていません。四半世紀前のミサイル護衛艦「たちかぜ」型は「あたご」の約半分の排水量で定員は250人だったのにです。

海上自衛隊は省力化という名目で、大幅な自動化や少人数化をすることで、現実に起きている護衛艦の定員不足を糊塗してきました。しかし「あたご」の事故でも判ったように、20名の当直員が各部署で任務に就いていながら、その連携は悪く、操艦指揮を執る当直士官の判断も稚拙であった訳です。これは副直士官の時代から操艦の上での訓練が不足してきたという推測を呼びますが、その点も海難審判所は踏み込みませんでした。現実にはCICに当直士官が詰めていることも多く、いわゆるハンドリング(操艦)に関して、昔の(昭和50年代頃まで)初級士官に比べると操艦技術に自信が持てる士官ばかりではないのではないか。当直士官としての資質を単に知識だけで計っていないかなども迫ることが出来たでしょう。

ですから、護衛隊への「勧告」というのは、こうした意味も含まれていると海上自衛隊側が「勧告」の意図をくみ取る努力をしない限りは、事故は再び繰り返される可能性があるのではないかと言えるのかも知れません。

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コメント

 お久しぶりです。どうちぇです。
花岡信昭氏のMLの受け売りですが、海難審判の報道では「あたご」側だけを断罪していますが、勧告の清徳丸の責任が抜けていますね。
 勧告文を読めば、発生要因に「あたご」の監視不十分があったが、清徳丸にも衝突をさける努力がなかったと述べていることが判ります。
 まぁ、日本のマスコミらしい報道ですが。

裁決書本文
http://www.mlit.go.jp/jmat/press/h20/210122yh.htm

 300人の定員に対して、280人も乗艦しているのは、当時の「あたご」ぐらいのものです。特別な行動だったからです。
 だから、帰国後はさらに40人ぐらい減っています。
 自衛艦の乗員充足率は普通70%です。いわゆるイージス艦になると、充足率は高く80%程度。どこの部隊でも人員不足です。幹部はせいぜい1日3時間しか睡眠時間はありません。

 ちなみに、当直士官はCICには詰めません。航海指揮官である当直士官がCICに詰めたら、艦橋に航海指揮官がいなくなります。操艦者がいないことになるので、フネが動きません。
 船舶の輻輳しない海域において、CICに立直することがあるのは、哨戒長です。
 
 副直士官は、操艦しません。

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ずいぶんと時間がかかりましたね。 もうすぐ1年かぁ。 海上自衛隊イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突で、横浜地方海難審判所はあたごの監視が不十分で、清徳丸を避けなかったことを事故の主因とする裁決(判決)を言い渡しました。 事故が起きた当初は、大き... [続きを読む]

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