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2010年4月

2010年4月28日 (水)

中国的発想とインシデント(incident)

「成田空港で25日、着陸直前の中国国際航空機と管制官との通信が途絶え、同機が許可を得ないまま着陸したトラブルについて、同機のパイロットが国土交通省に「何度か通信設定を試みた」と説明していることがわかった。国交省によると、同機は午後0時9分、羽田空港のレーダー管制室から「以後は(成田空港の)管制塔と交信するように」との指示を受けると同時に、管制塔と交信するための周波数を伝えられた。成田の管制塔は6回にわたり呼びかけたが同機からの応答はなく、無許可で着陸。着陸の約20秒後、同機が周波数を合わせて管制塔との交信を始めたという。国交省では、同機が管制官と交信するための無線の周波数を誤って設定したため交信が途絶えた可能性が高いとみている。このため、機器の故障や、意図的に交信しなかった可能性は低いと判断した。」

別に中国国際航空機が滑走路に他の飛行機が居ないのを確認してるんだから、管制塔と連絡をしなくても、着陸して問題はないのじゃないの?という疑問が、この記事を読まれて浮かんでくるとは思います。でも、そう思って無断着陸を始めた途端に、滑走路に離陸をしようと航空機が入ってくることは充分あり得ます。あるいは滑走路の真ん中あたりを航空機が横切ろうとし始めることだって有ります。そうなったら双方の航空機は激突し、最悪の場合は炎上して、双方の乗員乗客が犠牲になる事態だってないとはいえません。滑走路の使用状況の全体像は管制塔しか知りません。今居ないから大丈夫は単なる思い込みに過ぎないのです。そんな希望的観測で乗員乗客の生命を預かって貰っては困ります。

だから無断着陸は問題視されているのです。

世界中の旅客機は共通のルールに従っています。空は広くて自由に飛べるように思えますが、実際は高速道路と同じように通れる場所が世界中の空で決められています。その高速道路を進み、降りてくるインターチェンジから駐車場の止める場所まで全てを指示するのが管制といわれる業務です。旅客機側は必要なタイミングで管制と連絡を取り合い、その指示を受けて機体を操縦する二人三脚のような行動で日々空の安全は保たれています。この管制業務がどれほど精密に組まれているかの一例を以下に紹介してみます。

出発空港から目的空港までの、出発から到着までの管制業務の流れは概ね次のようになっています。

①移動開始の準備が出来ると定刻(出発予定時刻)の約5分前に航空機側が「DELIVERY」(飛行場管制所管制承認伝達席)と交信を行い、目的地と要求巡航高度を通報して管制承認を求める。
②「DELIVERY」の管制官は通報に従い飛行ルートを管轄する「CONTROL」(管制区管制所)に管制承認を求め、其れを得てから、受領した管制承認を航空機に伝達する。
③管制承認を得た航空機側は、「GROUND」(飛行場管制所地上管制席)と通信を行い、滑走路手前までの走行指示を受ける(スポットから機体を滑走路までの誘導路へ向かえるように位置を変えるプッシュバックから、どの誘導路をどういう風に走行するか、何時から走行するかも全て指示を受けてから始めないといけない。無論勝手にこの時点では滑走路に入る事は出来ない)。
④滑走路手前に来たら 航空機は「TOWER」(飛行場管制席)と通信を行い離陸の許可を求める。飛行場管制席の管制官は滑走路の交通を考慮して離陸許可を出す(ここで初めて機は滑走路に入り滑走を始められる)。
⑤ 離陸後、航空機は「DEPARTURE」(管制所出域管制席)と通信を行う。DEPARTUREはレーダー画面上で航空機を離陸滑走路の末端から1海里以内で捕捉して識別する。識別が出来ると、その航空機に対するレーダー管制業務が開始され、混み合う空港上空をどういうルートで飛行して上空に設けられた航空路へ入るかを指示する。
⑥航空路の手前に到達すると「DEPARTURE」は、誘導してきた航空機に「CONTROL」(管制区管制所)に業務が移管されりことを伝え、航空機がCONTROLと通信を行うように指示を出す。
*日本では空域を4分割し、札幌、東京、福岡、那覇の各航空交通管制部で航空路管制業務を行っている。
⑦「CONTROL」ではいくつかの管轄空域(セクター)を飛行している航空機に対して、必要に応じてレーダー誘導並びに高度変更等や降下の指示を出す。
⑧目的の空港が近づいてくると、「CONTROL」から「APPROACH」(ターミナル管制所)に業務が移管され、航空機はAPPROACHと通信を行う。
⑨「APPROACH」は他の到着便の様子をみながら到着順位の決定を行い、必要なレーダー誘導や降下の指示並びの速度調整を行い、空港への進入許可を出す。そして、「TOWER」(飛行場管制所)に業務を移管する旨を航空機に伝え、航空機はTOWERと交信を行う。
⑩「TOWER」の管制官は滑走路上に航空機がいないことを確認の後、着陸許可を出す。
⑪着陸後は「GROUND」(飛行場管制所地上管制席)と通信を行う。GROUNDは駐機場(スポット)までの走行経路を指示し、走行の許可を出す。
⑫スポットへ到着。此処で管制業務は終了。

①から⑫まで全ての動作の前に通信設定を行い周波数を変更して通信を行い、指示や許可を得て行動するのが決まりです。

今回は⑩の時点で通信設定を誤ったために「TOWER」の指示が聞こえない状態になっているのにも関わらず、中国国際航空機の機長は着陸出来ると勝手に判断して、其れを実行に移してしまった訳ですが、①から⑨まではちゃんと通信設定は出来ていたのに、⑩でミスを犯したことになります。通常、このような状態に陥ったら、機長は着陸を諦めて一旦上空に戻ることにします。それが定められたルールですし、一番安全な対処法であることは訓練で嫌と云うほど叩き込まれているはず。なのに、今回は其れを無視して着陸してきた。何故?

中国はこう云っています。

27日、中国新聞網は、中国国際航空担当者のコメントを掲載した。担当者は「日本の報道と事実は異なる」と反論した。当該機は着陸態勢に入る前、成田空港付近の東京ターミナル管制所と交信を続けており、B滑走路への進入許可は得ていたという。その後、成田飛行場管制所と交信を試みたが、反応はなかった。当日は天候がよく、また飛行高度が低かったため視界は良好。滑走路上に障害物や他の航空機がなく、安全が確認できたため着陸したと話している。また中国新聞網は、「この時間帯は着陸機が少なく、直前の着陸機とは3分と十分間隔があいていた。交信できなくなった時点で、直前機は滑走路から誘導路に出ており、国交省は『重大なトラブルではない』としている」(中国新聞網)

この中国の説明がかなり変なのは、私が説明した手順をよんで頂ければ判ると思います。

何れにせよ、指示を無視した理由が交信できなかったというのは確かで、そこに事故を誘発するインシデント(incident)が存在していると見ていいでしょう。インシデントというのは、重大事故に至る可能性がある事態が発生したものの、実際には事故につながらなかった潜在的事例のことを云います。このインシデントの多発を見逃していると最後は重大事故が起きて、多くの犠牲者を出してしまうのです。

こうした事を合理的に説明するのには、労働災害の世界で高名な「ハインリッヒの法則」というのを参考にしてみたら理解出来ると思います。「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故(重傷以上の負傷及び死傷を出した)があれば、その背後に29件の軽度の事故があり、300件のインシデントが事故の前に潜んでいるとされています。この経験則を見逃さず、予防可能な不安全行動や不安全状態をなくすことで重大事故のリスクを減少させることができるのです。

ですから、日本では「航空法第76条の2」において、飛行中に他の航空機との衝突・接触の恐れがあった場合と、「事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたとき」(同法)には、機長が国土交通大臣に報告することが義務付けられています。この報告義務が発生する事態を航空法上の重大インシデントといいます。なお、これに該当する事態は、「航空法施行規則第166条の4」により定められています。

最近の報道を見ていると、日本では離着陸時の管制を無視した行為が多発しています。私達は航空機事故というと飛行中に何らかの原因で飛行が出来なくなり墜落することを想像しがちですが、航空機の事故の7割は離着陸時に発生しているといいます。つまり、近々に羽田や成田などの混雑している空港で、滑走路上での衝突事故が起こる可能性が高いのではないかという予測が成り立つかもしれません。

2010年4月27日 (火)

どうして奈良に鹿はいるのか

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「先月、国の天然記念物に指定されている奈良公園(奈良市)のシカが矢で撃たれて死んだ事件で、警察は13日、文化財保護法違反の疑いで三重・津市のラーメン店店主・稲垣銀次郎容疑者(39)を逮捕した。また、新たに、三重県の飲食店店員・伊達恵容疑者(37)を同法違反の疑いで13日に逮捕した。この事件は先月13日朝、奈良公園内にある春日大社の参道で、メスのシカの腹部に長さ52センチのボウガンの矢が刺さっているのが見つかったもの。シカは「奈良の鹿愛護会」によって保護されて治療を受けたが、矢は肺を貫通していて2日後に死んだ。シカは妊娠していたという。 稲垣容疑者は「シカの肉を売れば金になると聞いたので、シカをとりに行った」と供述しているという。」

鹿は、山岳地帯などで野生のものは案外多く生息していますので、都会に近い山奥でも希にですが見掛けます。しかし、街中にあれだけの数の鹿がいるのは奈良市の奈良公園だけでしょう。不思議なことに奈良公園以外の、例えば薬師寺あたりに鹿がいるかといえば、居ない訳でして、けして彼等は野生じゃないのだと思わせてくれます。
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ところで、奈良公園の鹿はどうして、あの場所に居るのでしょう。それにはあの春日大社が絡んできます。

奈良・平城京に遷都された710年(和銅3年)、藤原不比等が藤原氏の氏神である鹿島神(武甕槌命)を春日の御蓋山(みかさやま:若草山の南にある山)に遷して祀り、春日神と称し、後に現在の春日大社の場所に、鹿島神を祀る社を建てました。この史実とは別に伝承では、春日の御蓋山山頂に、武甕槌命(たけみかづちのみこと)が768年に白鹿に乗り天降ったとされ、神の使いなんですよ、あの鹿は。なので「神鹿」(しんろく)と呼ばれたりもしておりました。

ですから、江戸時代までは、奈良の鹿殺しは重罪であり、犯人は死罪と決まっていました。ちょっと叩いただけでも五貫文の罰金だったとも。

このような事情から、「奈良の寝倒れ」という言葉が生まれました。

ある朝、春日大社の参道に行き倒れた鹿が死んでいた。参道沿いで一番早く起き出した店の主人は自分の店の前に鹿の死体が あるのを見て仰天し、このままでは自分に鹿殺しの嫌疑がかかると思い、こっそり隣の店の前へと鹿の死体を引きずって、素知らぬふりをして自分の店の前を掃 き清めた。その次に起きた店の主人も自分の店の前に鹿の死体があるのを見て仰天し、まだ閉まっている隣の店の前へと鹿の死体を動かした。そうやってそれぞ れの店の主人は慌てて次の店の前へと鹿の死体を動かしていき、そのうち夜が明けた。最後に鹿の死体が動かされたのは、通りでも一番の寝坊として有名な男の 店の前であった。男が起き出したときには既に日が昇っており、男の店の前には大勢の役人が駆けつけていた。こうして哀れ寝坊の男は死罪となり、それ以来奈 良の商家はどこも朝が早いという。


こういう有様ですから、”いくら何でも”という機運が江戸時代にはあったようで、その辺りの雰囲気を上方落語の古典のひとつ『鹿政談(しかせいだん)』が伝えています。少し長いですが引用してみます。

現在でも鹿は奈良の名物であるが、かつては鹿が『神獣』とされていた事もあって、現在からみると想像を絶するほどの手厚 い保護が行われていた。何しろ、ちょっと叩いただけでも五貫文の罰金、もし間違って殺そうものなら、男なら死罪、女子供なら石子詰めという、当時の最高刑 が待っていたのだ。

そんな時代の、ある朝に起きた出来事。

奈良三条横町というところに、豆腐屋渡世を営む老夫婦が住んでいた。主である与兵衛が朝早くから起きだし、豆を挽いていると表で何やら物音がす る。慌てて飛び出してみると、大きな赤犬がおから(卯の花)の桶に首を突っ込み、旨そうに食べていたのだ。

朝から商売物を荒らされるとは縁起が悪い。さすがの与兵衛もカッとなり、手近にあった薪を持つと犬にめがけてポーン…命中した。まさか当たってし まうとは考えていなかった与兵衛さん、助け起こそうと慌てて近づき…絶句。なんと、倒れていたのは犬ではなくて鹿!!何とか介抱してみたが、鹿は一向に息 を吹き返さない。そのうち辺りも起きだしてきて、町中ひっくり返るような大騒ぎとなった…。

当時、鹿にまつわる事件を担当していたのは目代(代官)の塚原出雲と、興福寺の番僧・了全の二人。この二人が連名で願書を書き、哀れ与兵衛はお裁 きを受ける身に…。

この裁きを担当することになったのは、名奉行との誉れが高い根岸肥前守というお方だ。お奉行様とて、この哀れに老人を処刑したいわけではない。何 とか助けようと思い、与兵衛に「生国は?」「病はあるか?」等と次々質問してみるが、嘘をつくことの嫌いな与兵衛はすべての質問に正直に答えてしまった。 「生まれは奈良でございます。病一つございません。私はどうなっても構いませんが、残った婆さんにはどうか憐れみを…」

こうなっては、もう与兵衛を助ける手段はない。困った奉行、しばらく考えていたが、ポンと手を一つたたくと部下に鹿の遺骸を持ってくるように命じ た。遺骸をじーっと見て、ひと言。「これは鹿ではない、犬だ」。「鹿には角がなくてはならない。しかし、これには角が無いではないか? 犬ならば裁きの必 要はない、この願書は差し戻しといたす」一同感心して「これは犬でございます」。中には、「今、ワンと鳴きました」なんて言う人もいたりした。

しかし…。その裁きに待ったをかける奴が現れる。鹿の守役、塚原出雲だ。「お奉行様のお言葉とは思えませんな。それがし、犬と鹿を取り違えるほど モウロクはしてござらぬによって、今一度お調べになるようお願い申し上げます」奉行が角の事を尋ねると、「鹿は毎年春、若葉を食しますために弱って角を落 とします」とやり返す。

奉行、またしばらく考えた。「そこまで申すのなら、鹿の前に別の事を調べねばならぬ…」、この頃、鹿の餌料を着服し、高利で貸し付けてボロ儲けし ている不届き者がいるという。それは誰だ…?「毎年、幕府から下される鹿の餌料は三千両。鹿の腹が満たないわけがない」。『神獣』とはいえやはり動物。空 腹に耐えかねて城下にさまよい出てしまったのだろう。そして人の品を荒らしたのだから、最早これは盗賊であって打ち殺されても文句はない。「それでも…も し、この裁きを続けたいのであれば、今度は鹿の餌料を横領した者の裁きを始める。どうじゃ…? これは犬か…鹿か?」

塚原たまらず「犬鹿蝶!!」、奉行に怒られてしまった。「わたくし、歳のせいか犬と鹿を取り違えてしまったようで…」。これにて一件は落着。

お白州の後、涙を流す与兵衛に奉行が声をかける。「与兵衛、斬らずにやるぞ」、「マメで帰れます…」


さて、鹿肉を取るためと嘯いてる三重の男女ですが、この際はご条法を奈良時代に戻して、男は死罪、女は石子詰め(地面に穴を掘り、首から上だけ地 上に出るように、人を生きたまま入れ、その周囲に多くの小石を入れ、圧殺したもの。)にしてあげてみたらどうでしょうか?

あと裁判では裁判員に、奈良公園の鹿を1匹入れて下さいね。

ミスは許されるべき

http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2719154/5631006

「ほんの1か所の間違いが、ある料理本の廃棄処分につながった――理由は、誤植。材料に記載された、「塩と粗挽き黒コショウ」の黒コショウ (black pepper)の部分を、「黒人(black people)」と誤植してしまったのだ。 ペンギン・ブックス・オーストラリア(Penguin Group Australia)社が出版した料理本「パスタ・バイブル(Pasta Bible)」の在庫7000冊が廃棄処分のうえ刷りなおしとなった。同社のボブ・セッションズ(Bob Sessions)氏は、「このような間違いがあったことは誠に遺憾。苦情は今のところない」と語っている。掲載されていたレシピのうち150点は、「塩 と黒コショウ」が材料に入っていたが、そのうちの1点だけが間違っていた。パソコンのスペルチェックが原因の可能性もあるという。「もちろん、校正者が気 づくべきだったが、料理本の校正は非常に難しい。ミスは許されるべき」とセッションズ氏は語る。料理本のリコールは難しいが、もしこの「間 抜けな間違い」に対してのクレームがあれば、訂正版と取り替える予定だという。」

「黒コショウ(black pepper)」の部分を、「黒人 (black people)」と誤植してしまった。

出版物に誤植や誤記は避けられないものですが、塩と粗挽きの黒人を使ったパスタは食べたくないですね。でも、この記事で注目したいのは「ミスは許 されるべき」という部分です。ヨーロッパは概してこういう思想なのです。(記事の出版社はオーストラリア)

その昔、バッキンガム宮殿に男が侵入し、女王陛下の寝室に入って、女王陛下に話をするという不祥事が起きました。たまたまですが、陛下の部屋の前に詰めていた警備係が席を外していて、女王陛下が通報するまで、この侵入に警備側は誰も気がつきませんでした。

で、事後に処分されたのは誰だったかと云えば、それは席を外していた警備係のみでした。無論のこと宮殿の警備責任者も処分は されていません。監督責任とか任命責任とかを云々する話も出てはきませんでした。ですから、内務大臣とか、総理大臣が辞めろという話も議会では出なかったそうです。

これはどういうことか。

彼等は100%の警備など、そもそも不可能だと始めから思っているのです。80%も達成出来たら成功だという考え方は、何も英国人だけじゃありません。ヨー ロッパの他国でも、ある程度のリスクを包括した上で警備は成り立つと考えています。逆の言い方をしたら、テロリストのハイジャックした飛行機に対テロ部隊が突入して人質救出作戦を決行し、乗客に犠牲者が出たとしても、それは数名ならリスクヘッジにかなうと考えます。仮に死傷者が出たことに対して、その批判が出て来たとしても、政府の責任追及云々には至らないということです。

そもそもハイジャックした犯人が悪いのであり、責任はそちらへ求めるべきだという発想になっています。

今の日本社会は、この逆です。追及する方にだってミスをする可能性があるのに、他人にはミスは許されないと詰め寄る。責任を取れと直ぐに口にする。そして自分がそう云われる立場になったら、素直に責任を取ったりはしない。その好例が、政治家が金の問題でちゃんと説明出来ないのなら辞職しろと、かっては詰め寄っていた鳩山総理自身が、政治と金の問題で追及されると、けして辞職しな い今の姿です。

こういう他に厳しく、自らに優しい世界で、マスコミが恣意的に悪人を造り出し、責任追及をショーにしてしまう、この国も、少しは「ミスは許されるべ き」という言葉の意味を考えても良いのではないですかね?

2010年4月20日 (火)

目立たない目立ちたがり屋の焦り

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「アメリカの新聞「ワシントン・ポスト」は14日付のコラムで、核セキュリティーサミットに出席したリーダーの中で鳩山首相が「最大の敗者」と酷評した。理由として、鳩山首相側が日米首脳会談を要請したにもかかわらず、公式の首脳会談が実現しなかったことを挙げている。 一方、最大の勝者はアメリカ・オバマ大統領と90分間会談した中国・胡錦濤国家主席で、「アメリカにとって中国が重要な存在であることを印象付けた」と指摘している。」

記事の内容に入る前に、まず「ワシントン・ポスト」社について。

アメリカの新聞にも全国紙と地方紙があるのですが、どちかといえば地方紙が根付いているお国柄です。そんな中で全国紙の発行部数でいえば第五位に位置するのが「ワシントン・ポスト」社。日刊66万部だそうです。

「ワシントン・ポスト」社と聞いて私が連想するのはボブ・ウッドワード(Bob Woodward)という有名記者の名前です。『大統領の陰謀――ニクソンを追いつめた300日』はあまりに有名ですが、ブッシュの戦争』(日本経済新聞社, 2003年)、『攻撃計画――ブッシュのイラク戦争』(日本経済新聞社, 2004年)、『ディープ・スロート――大統領を葬った男』(文藝春秋, 2005年)、『ブッシュのホワイトハウス』(上・下、日本経済新聞社, 2007年)など、政治の現場を取材した力作も多い彼ですが、一記者がニクソン大統領を辞職に追い込んだという話をどうも日本の一昔前の知識人はえらく高評価し、それを支援した「ワシントン・ポスト」社も立派な新聞社だと思い込んでしまってる感があるのですが、この新聞社は昔から日本が嫌いで、共産中国に寛大です。日本風に言えば左翼系の新聞社ということになりますね。

まあ、日本だと「朝日新聞」に毛の生えたような論調だと思っておけば間違いないでしょう。だから中国を持ち上げてるのは当然で、その分日本を落として効果を狙ってるという案配です。ですから内容にそう引っ掛からないでもいいのです。

ただ、アメリカ国務省からして、鳩山総理にスルーしているのは事実です。例えば以下のアドレスでフォトギャラリーを見てみたら判ると思います。

無論スルーするには事情があります。公式には今回鳩山総理とオバマ大統領の間に公式会見が有りませんでした。非公式には、今回のサミットはいわば核兵器テロを抑止するのが目的の集まりです。核兵器を持たない日本がしゃしゃり出てきて、唯一の被爆国とか、核爆発の悲惨さを強調されたら、それは何時かは核兵器を人類に対して初めて使用した国は何処かという話に行き着きます。そりゃ困りますよ、何せ主催国が当事者ですから。しかも当時の国際法に照らしても(非戦闘員に対する無差別な攻撃の禁止)、非合法な行為であったのは明らか。サミットの目的が転換しちゃいます。

前述しましたように今回のサミットは、核物質の安全確立と、核兵器及び核物質の管理強化に向けた国際的な合意を取り付けるのが目的です。共同声明でも、核テロを「国際安全保障への最も重大な脅威」と位置づけ、各国が責任をもって、保有する核物質や核施設の防護、安全維持、核流出の防止対策を講じていく方針を打ち出しています。(ワークプランはこれです)

逆に言えばこのような会議に世界から47カ国もの首脳がワシントンに馳せ参じると言うことは、トム・クランシーの描いた『恐怖の総和』(The Sum of All Fears)のような核テロが現実味を持っている時代なのだと云うことなのですが、どうも日本ではそういう風には受け取られていないようです。ちなみにアメリカにこれだけの首脳が集まるのは国連が戦後に作られた際以来だそうで、クリントン国務長官は異様に張り切っていたそうです。あの人はその程度の人なんですね。

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日本の一昔前の知識人さん達は「Nuclear Security Summit」という英語を理解出来ないようで、

平野博文官房長官は9日午前の記者会見で、鳩山由紀夫首相が12-14日に訪米し、ワシントンで開かれる核安全保障サミットに出席することを正式に発表した。首相は同サミットで「核兵器なき世界」の実現を訴えるオバマ米大統領への支持を重ねて表明する方針だが、公式の日米首脳会談は見送られる。(産経新聞)


なんて政府の官房長官が言い出す始末。テレビなどでも訳知り顔で「唯一の被爆国としてハッキリモノを言うべきだ」とか云って、話をすり替えてしまいます。その上こんな場で普天間の話を持ち出すべきだと云うのを誰も疑問に思わない。

おいおい、核テロの脅威は日本だって充分すぎるほど可能性があるはずでしょう。何故って、沿岸部にこれだけの原子炉がある国は他にはないんですよ。原子炉を爆破するだけでも被害は出るし、メルトダウンを制御室を占拠して起こすこともあり得る話だし。ましてや日本は米・ロの次くらいに核兵器の原料を貯め込んでる(原子炉で燃やした燃料を廃棄物という形で集積している)潜在的な核兵器開発予備国ですよ。IAEAが一番監視している国のひとつだと言っても過言じゃありません。国際原子力機関(IAEA)の事務局長は日本人なくらいですし。

だからこそ、このサミットに出席した以上は、日本は東シナ海を含めて日本が制海権を発揮出来る海域と空域で、核物質の不正な動きを監視するために、海自や海保、情報機関などを動員してあたり、アメリカ政府とも共同歩調を積極的に進めたいと、非公式会談で云うべきなんですけどね。

ここで普天間問題の話を出すのは、いわば親友の結婚式に出席して、新郎に昔の彼女の話をし出すよなもので、そりゃKYだよとアメリカ側に批判されても仕方がないんですが、どうもそれを思い至らないで、日米同盟に亀裂とかいう的外れな批判をしたがるのはどうして?と云いたいですね。要するに日米同盟を悪くしたい意図でもあるんでしょうか?

評論家もマスコミでニュースを伝える制作者も、ましてや与党の首脳陣はせめて、以下の文章くらいは目を通してから、このサミットのコメントを出して欲しいモノですけどね。

核テロリズムの行為の防止に関する国際条約
核物質防護条約(CPPNM)
国連安全保障理事会決議(国連安保理決議第)1540

何時もながら、こんな外交音痴のマスコミ、評論界、そして政治家ばかりに、嘆息するばかりです。

PS

浮かれてるという意味では、次のサミット開催国である韓国もこの決定に鼻高々な様子。隣国のヤクザ国家が核兵器を脅迫と交渉の道具にしてる当事国だからこそ、次のサミット開催までにその問題を解決してねという無言の圧力なのを判ってらっしゃらないのは何故なのでしょうか?

テレビは正しいことばかりを云わない

http://www.j-cast.com/tv/2010/04/19064772.html

核保安サミットの夕食会冒頭に行われた鳩山首相とオバマ米大統領の『非公式会談』。その中身は明らかにされていなかったが、18日付の読売新聞が1面トップですっぱ抜いた。それによると、オバマは次のような疑念を示したという。 「あなたは『私を信じてほしい(トラスト・ミー)』と言った。しかし、何も進んでいないではないか。きちんと最後まで実現できるのか(Can you follow through?)」

スタジオではこの記事が紹介されたあと、日本国内の米軍基地の存在を否定する意見まで飛び出し大騒ぎ。口火を切ったのはジャーナリストの鳥越俊太郎。まずマスコミ批判から。「あのね~、読売新聞が1面トップで報道したが、ボクはメディアの姿勢として、アメリカの大統領がこうだとか、高官がこうだとか、アメリカの新聞がこう言っているだとか、アメリカの顔色をうかがうような報道をいつもする。これに非常な違和感を持っている。日本が、メディアも総理大臣も含めて大事にすべきは日本の国民の声ですよ」

アメリカの顔色ばかりうかがうのも確かに良くないが、読売新聞のこのトップ記事がそれが当てはまるのかどうか??

さらに鳥越の口から、次のような米軍基地の存在を否定する意見が飛び出した。 「鹿児島県徳之島で普天間基地移設の反対集会が開かれ、島民の半分以上が集まった。日本国民は米軍基地はどこもいらないと言っている。これが国民の声ですよ。これをストレートにアメリカに伝えなければいけない。もうじき事業仕分けが始まるが、在日米軍基地の事業仕分けをしなければいけない。ゼロからスタートしてここはいる、いらないと。いると言われたら協議すればいい」だから支持率が落ちる

政治記者歴の長い三反園・テレビ朝日コメンテーターも呼応して次のような発言を。 「鳩山さんサイドは『(読売の記事について)こういうことは言われていない』と言ってる。が、鳥越さんの言われるとおり、そのことを鳩山さんが(アメリカに)言ってほしいと思っているのに、やらないからこういう記事が出るし、支持率が落ちてくるのではないかと思う」

2人ともなぜか興奮気味に一気呵成にまくし立てた。戦後も65年が過ぎ、進駐軍のイメージが残る米軍基地の存在を見直すのは大賛成だが、四方を核保有国に囲まれて、どのようにして国を守るか。今の自衛隊で十分なのか。その話が興奮のあまり抜け落ちていては??


J-CASTテレビウォッチというHPに【ワイドショー通信簿】というコーナーがあります。結構辛口な分析も載るので、まめにチェックしています。

上にご紹介したのは、2010/4/19 15:13にUPされたもの。

鳥越俊太郎といえば、毎日新聞の名物記者になるつもりが傍流のサンデー毎日に飛ばされた人。そこで編集長の指示に従い取材対象を匿ったら警察にマークされ、毎日新聞全体が警察からガードされるのを懼れた上層部は彼をサンデー毎日から呼び戻し、外信部へ左遷。その後再びサンデー毎日へ戻され編集長になるも1年で退社。以後、テレビキャスターへ転身。記者時代の功績も毀誉褒貶に彩られてるし、最近では日本版オーマイニュースの初代編集長に就任して、見事にオーマイニュースを潰してくれたという功績(?)がありました。

おばさま方にはウケるようですが、彼のコメントは時々、自分個人の勝手な思い込みを、さも正論風に仕立てるので、ウッカリしてるとそれを鵜呑みにした方がミスリードをさせられる危なげなものが満載です。まるで飲み屋で友人と与太話をしてる感覚でテレビに出てコメントをしないで欲しいんですがね。

そんな彼の安全保障に関する感覚はこんなものです。

「今の日本は差し迫った防衛上の危機は無い。したがって防衛予算は大幅に削減するべきである。」(2007年9月28日報道ステーション)


そういう人が、こういうことを今回発言してます。

「鹿児島県徳之島で普天間基地移設の反対集会が開かれ、島民の半分以上が集まった。日本国民は米軍基地はどこもいらないと言っている。これが国民の声ですよ。」

本当に島民の半分が集まったのかどうかの検証は実は誰もしていない。数字だけが独り歩き。最終的には1万7千人が集まったなんて報道もあったほど。これじゃ島民の三分の二は集まったようなモノ。

もっと凄い飛躍が、徳之島の半分の島民が米軍基地はいらないというのが国民の声にされてる下り。正直云って、日本国民は自分のところに米軍基地がないのであれば、別にあっても困らない。それが本音なんだけどね。

「もうじき事業仕分けが始まるが、在日米軍基地の事業仕分けをしなければいけない。ゼロからスタートしてここはいる、いらないと。いると言われたら協議すればいい」


米軍基地を日本から無くすなら無くすで、ちゃんとしたロードマップが必要で、20年ほど掛けてでも、段階を踏んで移行すべきモノ。もちろんながらアメリカが米軍の抑止力の代替措置を建前上求めてくる訳で、そこには米軍の段階的な撤退と自衛隊の増強なり、憲法を改正してでも軍事力を行使する法的な裏付けなりが整備されるという対案が必要。

鳥越俊太郎氏の世代は団塊の世代。学園闘争世代の悪い癖で、団交に出てきて、正社員の雇用を守れ!完全ベースアップ実施!とか云ってる感覚で、国家の安全保障を語り、自分側は被害者、弱者だから、強者は妥協して当然という、まあ負け犬根性で外交交渉を出来るという程度の国際感覚には涙が出てしまいます。こんな程度の人が大手新聞の外信部記者だったんですから。

日本のマスコミの白痴化をすすめた貢献者十哲というのが出来たら、是非加えてあげたい人物です。

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