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2010年10月

2010年10月 7日 (木)

原理原則だけで片付いたら楽だろうなぁ

「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)本部をめぐる詐欺事件で控訴中の元公安調査庁長官・緒方重威被告が5日、大阪地検の主任検事・前田恒彦容疑者(証拠隠滅容疑で逮捕)が法廷でウソの証言をしたなどとして、最高検に告発状を送付したことを明らかにした。緒方被告は5日、会見を開き、共犯に問われた不動産会社社長に対し、前田容疑者が違法な取り調べをしたにもかかわらず、裁判でその事実を隠してウソの証言をしたなどとして、偽証罪で告発状を送付したことを明らかにした。また、緒方被告自身に対する取り調べについては、当時の東京地検特捜部副部長で法務省の落合義和刑事課長が、机を強くたたいたり、大声を出したりするなどして供述を強要するなどした特別公務員暴行陵虐罪と偽証罪で告発状を送付している。」

まず最初に「特別公務員暴行陵虐(りょうぎゃく)罪」とは何かですが、これは刑法195条に以下のように規定されています。

裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処せられる(刑法195条1項)。また、法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、第1項の罪と同様である(刑法195条2項)。

「陵虐」という難しい言葉の意味は、辱めること、虐げることの上に酷くがつくような行いのことを言います。字を見てもわかりますが、元々は陵墓を曝いて、中にあった遺体を掘り出し、晒し者にするという中国や朝鮮半島で行われた最大の恥辱行為から来ています。まあ、それくらい辱められてる行いを陵虐というのだとご理解下さい。

刑法にいう陵虐とは、容疑者を取り調べる際に、拷問を行う事(本来は拷問による自白強要の防止が主旨なんでしょう)を戒めるために設けられています。したがって、学校の先生が煙草を吸った生徒に事情を聞く際に、素直に話さないからといって殴る蹴るの暴行を生徒に加えても、それは特別公務員暴行陵虐罪にはなりません。単なる暴行傷害罪で起訴されることでしょう。要するに、この法律の適用範囲は、警察官、刑務官、海上保安官、麻薬取締官、入国管理官、検事、判事及び、検察事務官、裁判所事務官などだということです。

この点を念頭において、本筋の話に入りたいと思います。

例えばですが、見知らぬ未成年の少女を誘拐し、拷問に掛けてなぶり殺しにした連続少女暴行殺人犯が逮捕されたとします。その犯人は何ら罪の仮借を認めないばかりか、犯罪そのものを合意の上で相手に頼まれたんだと供述したとしたします。取り調べに当たる警察官が、そうかそうかと供述書を作成して、検察に送検して良いモノでしょうか。

犯人は少女に対して人権を無視した行為を繰り返したにも係わらず、自分は人権を要求するという事態は、今の世の中の犯罪者には幾らでも見られる事例ですが、人権に配慮しつつ、周辺の状況証拠を固めて、容疑者の行いを事細かに立証し、仮に犯行を否認したとしても有罪に持ち込める捜査を行い、取り調べで容疑者に罪の重さを理解させ、反省させた上で全面自供に持ち込める・・・そんな捜査は何年かかるでしょうか。

このご時世、捜査費用だって削減され、それに反比例して犯罪は増加の一途を辿り、それでも送検して起訴した場合の有罪率は95%という、昔と変わらない高率を維持出来ているのは、脅して、怒鳴って、取調室の机を叩いて、被疑者に精神的圧力を掛けても、容疑者の自白を引き出しているからではないのでしょうか?

もしもドラマや映画のような法廷劇が頻繁にこの日本の法廷で繰り返されていたら、今年起訴した事件が数年後に裁判が開かれる事態になりはしないでしょうか?

また有罪率は50%を切っても、貴方はそれを非難しませんか?(というかマスコミは駄目だというキャンペーンをはりますが、それに乗せられないですか?)

要するに、記事にあるような緒方被告の訴えが原理原則からすれば当然の事とは云え、現実には無罪の人が犯罪者に仕立てられる可能性は少なく、緒方被告のように容疑は濃厚で、取り調べにやりすぎがあるというのは、自白が強要されていて、無実であるという主張に結びつけたい法廷戦術で、それを裁判所が認定出来るかはまた別の話です。

原理原則と現実の間のグレーゾーンを犯罪捜査で埋めるのは、結局は正義を貫くという意思と矜持な訳でして、それをプロというのだと思うのですが、ただ効率だけに目をやって、そういうプロが評価されない世の中になって久しいのに、ただ正義を求めても空理空論のようにしか私には思えません。

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