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2011年4月

2011年4月22日 (金)

偏った見方は危険ですという話

http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1579655&media_id=4

「栃木県鹿沼市でクレーン車が歩道に突っ込み小学生6人が死亡した事故で、逮捕された運転手柴田将人容疑者(26)が勤務するクレーン会社は22日、容疑者の母親から届いた手紙を公開した。手紙で母親は「持病などを隠した結果、迷惑をかけた」と謝罪している。手紙は便箋1枚で、「持病や執行猶予中であることを(親子で)隠した。心苦しかったが、息子が喜んで働いている姿に本当のことを話せなかった」と告白。事故の後、自分が経営する店を閉めることになったと報告し、「一生かけて償う。許してください」と結んでいる。同社によると、手紙は会社宛てで21日夜に見つけた。母親に連絡したところ、公表を了解したという。同社副社長は「入社後知らされていれば、防げたかもしれない」と疲れた表情で話した。」 

彼の持病というのは、てんかんです。今は昔と違い、てんかんでも薬を飲んでいれば発作を抑えられます。(すべてのてんかんがそうではないですが)

まず、ここを押さえて置いて下さい。

マスコミは、彼がてんかんであることに関して公表するのにかなり慎重です。

最近まで、てんかんの患者には自動車の運転免許取得が許可されていませんでした。運転免許をてんかんの患者に与えないと、法律に明記されていたからです。

てんかんと診断されると、その病状の如何に関わらず、運転免許は取れなかった訳ですが、現実にはかなりのてんかん患者が自動車を運転していたそうです。てんかんという病名を隠して免許を取得していた訳です。それでもあまり大きな社会問題になっていなかったことを考えると、実際には運転中に発作を起こして事故を起こす例が少なかったと云うことです。しかし稀ではありましたが、運転中に発作を起こして事故につながったというケースもあったそうです。

1999年10月26日、兵庫県三木市で、てんかん患者の女性が自動車を運転中にてんかん発作を起こし、小学校から下校中の児童3人の列にクルマが突っこんだ。この事故で1人が全身打撲で死亡、2人が重傷を負った。神戸地裁は、心神喪失状態だったという女性側の主張を受け入れ、無罪を言い渡している。

2002年9月27日に、滋賀県栗東市で、てんかん患者の男性が乗用車を運転中にてんかん発作を起こし、対向車線側に逸脱、軽トラックと正面衝突し軽トラックを運転していた男性が全身を強く打って死亡した。大津地裁は、運転中止義務違反の過失がないと指摘し、被告に無罪を言い渡している。

2004年3月7日午後3時40分ごろ、長野県長野市川合新田付近の国道18号で、てんかん患者の男性が自動車を運転中にてんかん発作を起こし、信号待ちのために停車していた乗用車5台に追突、クルマ数台が関係する多重衝突事故に発展した。この事故で1人が全身を強く打って死亡。6人が重軽傷を負った。長野地裁は、事故を起こした被告に対して懲役4年の実刑判決を言い渡している。

2008年3月9日午前に、神奈川県横浜市鶴見区下末吉3丁目付近の県道で、てんかん患者の男性がトラックを運転中にてんかん発作を起こし対向車線に逸脱、そのまま道路右側の歩道に乗り上げ、信号待ちをしていた歩行者2人を次々にはねた。このうち14歳の男子中学生が死亡、27歳の男性も重傷を負った。横浜地裁は、事故を起こした被告に対して禁固2年8か月の実刑を言い渡している。

2010年12月30日午後1時半ごろ、三重県四日市市羽津町の近鉄名古屋線踏切で、てんかん患者の男性が乗用車を運転中に意識を失い自転車3台に追突、踏切内に押し出された男性3人のうち2人が踏切に入ってきた急行列車にはねられて死亡した。


そういう現実に即して、てんかん患者を中心にした人々の尽力により、平成11年8月に「障害者に係わる欠格条項の見直しについて」という改正案が設けられ、道路交通法は平成14年に施行されました。

その基本はどのような病気でも一律に運転免許を禁止するのではなく、ある条件を満たせば運転免許を交付するということです。てんかんの場合には、どのような条件があるのでしょうか。新しい道路交通法は次のように述べています。

(1) 発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合。

(2)発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、x年程度であれば発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合。

(3) 医師が1年の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合。

(4)医師が2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化がない」旨の診断を行った場合

とされています。

この改正が行われて、柴田容疑者は運転免許を取得する時が出来た訳ですが、それでも自分の持病がてんかんであることは勤務先には伝えられませんでした。そうすると採用されないからです。

ここにマスコミの腰が引けている原因があります。

つまり、世間にはてんかんへの偏見がまだまだあると云うことですね。

筒井康隆の書いた『無人警察』(短編集『にぎやかな未来』に収録されている)という短編SF小説がありました。この小説の中に、自動車を運転しているてんかん患者の脳波を検知する『ロボット警官』が登場します。1993年、この作品が角川書店発行の高校国語の教科書に収録され、『日本てんかん協会』から同作品の削除もしくは他の作品に差し替えるように強い抗議が寄せられました。作者の筒井康隆は『日本てんかん協会』と数度に渡り交渉したそうですが、双方の主張は平行線を辿り、結局最後には筒井康隆が『断筆宣言』を発表し、全ての執筆活動を停止するという事件がありました。

この件は相当大きく報道もされ、騒ぎになりました。マスコミは、この事件を忘れていません。『日本てんかん協会』という圧力団体と対立するのを今回も恐れているのでしょう。

繰り返しますが、てんかん患者であっても、適切に薬を飲んでいれば運転は可能です。

ですから、今回のセンセーショナルな事故と、柴田容疑者の過去の事故歴とを重ねて、てんかん患者に運転免許を与えるなという結論に達するのは行き過ぎです。

また混同しないで欲しいのは、だから彼は許されるという訳でもないことです。運転免許をもっているてんかん患者の一人として、自分が薬を飲み忘れて事故を起こせば、どういう事態を招くのかという自覚が彼には足りませんでした。ましてや、一度事故を起こしてしまい、裁判で有罪判決を受けている身です。それが薬を飲み忘れて、また事故を起こし、子供を6人も殺してしまったのは責任を問われる事態です。

罪を憎んで病を憎まずという理解を是非お願いします。

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