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2012年7月 8日 (日)

プーチンのシグナルを読み間違えるな

http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=2068562&media_id=20

「防衛省は2日、ロシア海軍の艦艇26隻が北海道最北端・宗谷岬沖の宗谷海峡を、日本海から東に向けて通過したと発表した。領海侵犯はなかった。ロシア海軍は昨年9月にも20隻以上の艦隊が同海峡を通過してオホーツク海で大規模訓練を実施しており、今回も、大規模なミサイル射撃訓練などを実施するとみられる。通過したのはミサイル駆逐艦や戦車揚陸艦などで、1日午前から夜にかけて同海峡を東進。同省は「極東地域でロシア軍が活発化している」として警戒している。」

ロシア海軍の極東艦隊でちゃんと動ける船は全部演習に参加せよという指令が出ているかのようですね。無論そんな指示を出せるのは大統領しかいません。そうすると何かの意図があると考えるのが普通ですよね。

はい、そう思ったら以下の記事をまずはご一読下さい。

北方四島を事実上管轄するロシア・サハリン(樺太)州からの情報によると、メドベージェフ首相は、早ければ3日にも北方領土の択捉島訪問を敢行する。領土問題をめぐって日本を強く牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。メドベージェフ氏は、これに先立つ2日、ウラジオストクを皮切りに極東各地の視察旅行を開始。択捉島には、州都ユジノサハリンスクから入る方向で準備が進められている。ただ、実際の訪問は現地の天候に左右される可能性がある。メドベージェフ氏にはシュワロフ第1副首相やイシャエフ極東発展相ら10人もの閣僚が同行。一行は択捉島で港湾や空港などのインフラ整備状況を視察し、クリール諸島(千島列島と日本の北方四島)の発展計画に関する会合を行う計画とされる。プーチン露大統領と野田佳彦首相は6月中旬の首脳会談で、領土交渉の「再活性化」に合意したばかり。ロシアは極東開発をめぐっては日本との関係拡大を望む一方、北方領土の実効支配を挑発的に誇示し、領土交渉のハードルを高めておく考えとみられる。閣僚を伴っての極東歴訪は、政権が重視する極東開発への意気込みを示した形だ。2日には、ロシアが9月に初めて主催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の会場、ウラジオストク・ルースキー島の関連施設を訪問。閣僚や地方高官などと会合を持ち、APEC準備と極東の発展に向けて発破をかけた。一方、メドベージェフ氏はウラジオストク近郊で建設中の住宅街を視察した際、建設責任者から「この家の防寒パネルは日本製でマイナス60度の気温まで耐え、60年間品質が保証されています」との説明を受け、「どうして日本製なのか? パネルは自前で作らなければならない」と不満そうに応じたという。(産経新聞:2012.7.3 00:44 )


日本の政界の中には、とっくに破断になっているのに、プーチン大統領の就任で北方領土問題が再び動き出し、2島の返還があるのではないかと考えている一団がいます。しかし、現政権にはロシア政界とのパイプがほとんどありません。恐らく今の日本の政治家でプーチンに個人的なチャンネルがあるのは自民党の森元総理ぐらいでは無いかと思われます。また外務省の方も、例の鈴木宗男騒動の余波で、佐藤優氏らのロシアチームが徹底的に排斥されましたので、どれくらいの影響力があるのかは不明ですが、すくなくともプーチン&野田の首脳会談で北方領土交渉が再開できるように分析してしまった点を見ても、これはあてにならないと思います。

そういう風に考えてみると、今回の演習にしてもメドベージェフ首相にしても、6月の首脳会談の結果を日本が取り違えている事へのある種のメッセージではないかと推測出来てしまいます。だからこそ、耐寒建築素材を日本から輸入するのを辞めて自国で調達できるようにすべきだと云っているのでしょう。

では、どうしてプーチン大統領は日露関係の「再活性化」を首脳会談で約束したのでしょうか?

20120610

昨年の11月頃に、プーチン大統領は会見で「ロシアのプーチン首相が、間宮海峡に橋をかけてシベリア鉄道をサハリンまで延伸し、さらに海底トンネルで北海道までつなぐ」という構想を明らかにしました。これ以前に、シベリアの天然ガスをパイプラインで直接日本へ送る構想も、日本側が期待したほどには旨く行かないようです。5月のGWを利用してモスクワへ外遊した民主党の前原政調会長が、ロシアのラブロフ外相や天然ガス企業・ガスプロムの幹部と会って、両国の戦略的な発展の重要性に付いて意見の一致を見たと報じられていました。しかし、つい先日にガスプロムの幹部はパイプラインの建設自体が地質などの問題が多くて実現は不可能だと会見したことが報じられていました。

ロシアのガス輸出権は法令によりガスプロムが独占的に保有しています。ガス田そのものはロシア連邦政府が保有しているため、天然ガスの売上自体がロシア連邦政府の収益(税収)となります。日本政府は長年の協議と交渉を重ねてきた結果、「サハリン3」というガス田を中心に複数のガス田から天然ガスを輸入する事で日露が合意しました。現在はタンカーにより輸送されている天然ガスをパイプラインで輸送することで安定的な供給を確保したいとする思惑も、サハリンと北海道という地勢的な関係があればこそです。

この辺りの開発投資を促進し、トンネルや橋梁などの建設技術を日本から導入したいというのが、プーチン政権の思惑ではないかと思われます。 その取引の仕方として、プーチン小父さんは優しく、メドベージェフ小父さん頑固というキャラクターを印象づけ、北方領土の2島返還を餌にして、開発投資を引き出すのが狙いなのです。

その罠に嵌まれば、下手をしたら天然ガスは手に入らず、北方領土の返還交渉は日本政府の不誠実な対応にあったためとして、当分の間は凍結されてしまう事でしょう。

更に云えば、ガスの供給を受け、日本のエネルギー資源輸入の根幹をロシアが支えるようになった頃、ロシアはエネルギー外交を、時には恫喝外交の手段として行使してくる可能性があります。尖閣で中国漁船が巡視艇に衝突したようなトラブルが起きた時に、日本側に圧力を掛ける手段として、契約された供給量を提供する義務があるというのに、平気で天然ガスを止めてしまう挙に出て来る訳です。理由は機械の故障とか、テロの危険性とか、色々言いだすのが常です。

日本の政界の中には、日本がロシアのガスを恒常的に購入する事で、ロシアをコントロールできると云う人もいますし、評論家の中ではあの大前研一がメタルハイドレートの開発に400億円を投入するならシベリアの天然ガスに投資しろという人もいます。しかし、現実にはロシアのエネルギー外交に振り回されて、とことんまで対立が深まれば、日本が投資した設備も土地もロシアが強制的に凍結してしまうのは確実です。

これはここ10年のロシアとヨーロッパでの出来事を調べても判りますが、大前研一がいうような事にはなりません。国際的にもロシアと何等かの条約を結んで国家が安泰だった国は皆無です。日本でも1945年に不可侵条約を一方的に破棄されて侵略を受けた歴史的な事実がありますし。

ロシアは日本に対して天然資源外交で臨みたいのに、日本側はそのシグナルを理解しようとせずに、北方領土の返還ばかりを望めば、話が上手く行く訳が無いのは明らかですが、そんな事を考慮する暇が無いほどに、内向きな政界再編の事で手一杯じゃ、国益を思い切り損ないます。
 

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