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2012年9月21日 (金)

鵺にやられないように

http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=2161343&media_id=20

「沖縄県の尖閣諸島付近の海域に向け、多数の漁船が出航したとみられる浙江省石浦地区の漁港を20日、訪れた。港では、複数の船主が、地元の漁業規制当局から補助金の約束を得て船を送り出したと証言した。人口約15万人の石浦地区は大小1500隻余の漁船の基地だ。大部分の漁船が夏の休漁期間が終了した16日以降、沿岸や沖合の海域に出ており、漁港周辺は閑散としている。「釣魚島(尖閣諸島の中国名)に向かう漁船には、当局から10万元(約125万円)の補助金が出るぞ」波止場付近にある市場で、漁船5隻を持つ船主が明かした。同地区行政府の漁業監督部門が今月初旬、漁船100隻余に対し、尖閣海域に出航する許可を与え、石浦~尖閣付近の片道500キロを往復する燃料代に相当する現金10万元の支給を通知してきたというのだ。漁船乗組員の月給は3000元(約3万7500円)前後という同地区で、10万元は大金といえる。」

中国のデモ行為は基本的に中央政府や省政府のコントロールの下にあります。これは、1989年6月4日に「天安門事件」が起きて以来、徹底されていますので、こういう話しが出てきても驚くに当たりません。北京のデモでは参加者1人に100元を動員参加料として配ったという話しも、昨日あたりからマスコミに流れてきています。

つまり、一連のデモは中国政府の意図的な意思表示です。

それを受けてなのか、日本では一部の中国問題専門家と称する人が、これは次の指導者である習近平副主席による対日姿勢を明確にするために仕組まれたのだという解説が出始めました。さらに、パナソニックが今回暴徒に襲撃されたのも、中国進出のパイオニアであったパナソニックに暴徒を差し向けることで、脱日本企業というメッセージを発信したも同然だという話しも出てくるようになりました。確かに、白物家電の基本技術は、もう中国国内に移転されています。「Haier」が三洋電機を吸収合併した事がその象徴ですし、今更言うようなことでもありません。液晶テレビなどは韓国のサムソンに価格も品質も追い抜かれはじめています。だからこそのシャープの苦境な訳です。日本の家電メーカーが秀でているのは有機ELなどの先端技術だけ。そんな高価な家電技術は今のところ中国には必要がありませんから

確かに昨日あたりから反日デモは沈静化し、嘘のようにあの群衆が消えてしまっています。米国の国防長官が習近平副主席と会談した後というタイミングが気になりますね。

少し前に公開されたものですが以下は、大前研一の発言です。


▼ 尖閣諸島については、中国との間に密約が存在する
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 沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島に15日、香港の活動家らが上陸し、沖縄県警と海上保安本部は不法入国、不法上陸の疑いで14人全員を現行犯逮捕しました。17日の午後には全員が強制送還されました。
 
 また19日には日本人10人が上陸。周辺の海域で洋上慰霊祭を行なっていた団体のメンバーと見られています。政府の許可を得られていなかったことから、県警や海上保安庁が対応を検討しているとのことです。

 香港の活動家なる人物たちが、海上保安庁の目をかいくぐり、どうして上陸することができたのか?海上保安庁は防ぐことが出来なかったのか?という点は、ニュースを見ているだけでは釈然としません。

 おそらく香港の活動家の背後には、どこぞのお偉いさんがいてお金を出しているのではないかと私は想像しています。

 日本政府の対応について、日本国民の中には「対応が甘い」、「裁判にかけるべき」といった怒りの声もあるようですが、私は今回の政府の対応は正解だと思います。

 正確に言えば、この方法を取るしかないということです。尖閣諸島の最も大きな問題は、かつて自民党が中国と「密約」を結んでおり、それを国民はもちろん、民主党の議員さえも知らされていなかったという点にあります。その密約の内容は以下の様なものだと言われています。

 ・中国は、実効支配の原則から尖閣諸島を日本領土として認める
 ・しかし一方で、中国も国内法では領土権を主張する

 以前、事情を知らない民主党の三輪氏が「国内法」として領土主張した際には、中国から「その点は妥協できない」と大きな反発がありましたが、当然のことなのです。

 活動家が尖閣諸島に上陸した際には、日本で裁判にかけるのではなく、逮捕して中国側に送り返すというのが、「密約」に従えば「正解」です。ゆえに、今回は中国政府も公式には大きく騒ぎ立てるようなことをしていないのです。

随分前にカリスマ性を失った大前研一が語る”密約”という括りで物事を片付ける手法。これは世の中の納得いかない出来事を全て”陰謀があるから”であると決めつける方法論によく似ています。しかし、いま日本の中国専門家が言っていることも似たような視点であることは確かです。

曰く、

○自民党が中国と尖閣諸島に関して「密約」を結んでいる。

 ・中国は、実効支配の原則から尖閣諸島を日本領土として認める
 ・しかし一方で、中国も国内法では領土権を主張する

仮に密約があったとして、今でも有効という確約が何処にあるのでしょう。

大前氏のいう中国政府と結んだ密約。恐らく1978年頃に「日中平和友好条約」の交渉時に出来たものでしょう。何故なら国交回復時に、日中政府の間に領土問題は出てこなかったのですから。仮にあの時に尖閣問題が出てきたら、中国が近代化の起爆剤として欲していた日本から賠償金代わりの円借款交渉が宙に浮いていたでしょう。実際に尖閣問題を正式に出してきたのは、前述した平和友好条約での交渉からだったからです。

以下は批准書取り交わしのために鄧小平(当時副首相)が来日した際、日本記者クラブで行われたものです。

尖閣列島は、我々は釣魚諸島と言います。だから名前も呼び方も違っております。だから、確かにこの点については、双方に食い違った見方があります。中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束しました。今回、中日平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致しました。中国人の知恵からして、こういう方法しか考え出せません。 というのは、その問題に触れますと、それははっきり言えなくなってしまいます。そこで、確かに一部のものはこういう問題を借りて、中日両国の関係に水を差したがっております。ですから、両国政府が交渉する際、この問題を避けるということが良いと思います。こういう問題は、一時棚上げにしてもかまわないと思います。10年棚上げにしてもかまいません。 我々の、この世代の人間は知恵が足りません。この問題は話がまとまりません。次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることができるでしょう。 (日本記者クラブ記者会見:未来に目を向けた友好関係を)
   肝心の鄧小平が10年は棚上げにしても構わないという期限を切っているのに、1978年から既に34年も経ってしまっていて、本当に有効だと思いますか?

日本政府や外務省は、鄧小平の”一時棚上げ”という言葉にすがり、取りあえずこの問題は棚上げにして、日本の実効支配を主張するのみという希望的な観測に基づく政策に固執しているのではないでしょうか。だからこそ、大前氏のような人物に、さも密約があるから安心なのですと言わせているのかも知れません。

本当は平和友好条約の中で、尖閣諸島は日本の領土であるという文言を入れさせずに、条約成立ありきで進んだ、交渉時の判断が誤りだった。ここに自民党の責任があるのですが、そんな声は何処にも出てきません。これまた不思議な日本の風土です。

人を騙すには、99%の真実を語り、1%の嘘を上手く混ぜることであるというのが真理。この密約話の何処かに嘘があると考えると、何処なのでしょうか?

今回の問題でハッキリしたのは、中国が日本との間に領土問題があるとして、交渉を求めていること。そして日本は、中国との間にはいかなる領土問題もないという姿勢を鮮明にしていること。そして、中国では政権交代時に必ず政治力を示すために反日が利用されるということです。

胡耀邦主席が失脚した理由の一つも日本に妥協しすぎるという点でした。当時、胡耀邦と個人的にも友情を育んだ中曽根元総理が1985年に靖国神社を公式参拝した後、その翌年から靖国参拝を取り止めた理由について、後年の回顧録で「(私の靖国参拝によって)親日派である胡耀邦が中国共産党内の批判にさらされて失脚する可能性があったからだ。それはどうしても困ることだったから」と述べています。現在では胡耀邦の失脚は性急な政治改革の行き過ぎが鄧小平との不和を招いた点にあるとされるのが定説になっています。

くしも同じ胡という苗字の胡錦濤主席も、前任の江沢民から比べれば対日宥和路線だとされているのは皮肉な話しです。早い話、強硬派と宥和派が交替で出てきてるという説になるのですが、そんな筈がありません。基本的には日本から経済的な進出を引き出すには宥和が必要と判断すれば、そうするし、経済的にも対立があれば強硬的に態度を変えるというだけの話しだと思います。

だとすれば、この緊張関係を解くには、習近平が正式に主席に就任した直後に、日本は(まだ野田政権かは不明ですので敢えて政権名は出しません)尖閣問題での協議を次官級で要求することだと思います。ただし、この交渉は尖閣諸島は日本の領土だという主張をする場にして構いません。相手は話し合いが出来ることが成果としてカウントされるという形であれば充分です。

そして忘れていけないことは、尖閣問題は台湾でも重要な問題であるということを認識することです。台湾の立場にすれば、尖閣諸島が中国領になることは大変な脅威となります。日本が中国と交渉をして、共同管理にでもされたら、それも脅威であることに代わりがありません。この台湾の立場をちゃんと踏まえて、非公式で台湾と交渉をするパイプ作りをすることが大切ではないでしょうか。

敵の敵は味方という故事はけして嘘ではありません。

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