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2013年8月30日 (金)

シリアへの軍事攻撃機運が高まるが・・・

http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=52&from=diary&id=2557434

「米国と同盟国によるシリアへの軍事攻撃の策定が大詰めを迎えている。米政府高官によると、空爆を含む複数の選択肢が検討され、攻撃は数日間続くとみられる。数百人が死亡したとされるシリアの化学兵器使用疑惑をめぐり、現場を検証している国連の調査団はこの日、2日目の調査を終了。ただ、潘基文国連事務総長は、調査完了には4日必要との見解を示した。そうしたなか、米国と欧州、中東の同盟国は、アサド政権が化学兵器を使用したとほぼ断定し、軍事力を行使する機運が高まっている。英国は、シリアへの軍事介入を可能にする国連決議案をまとめ、国連安全保障理事会に提示。国連安保理はこの日、同案をめぐり協議を始めた。ロシア、中国が拒否権を行使することは必至とみられるなか、米国と同盟国は国連決議なしでも行動に踏み切る姿勢を鮮明にした。ただ、ホワイトハウスは、オバマ大統領がいまだシリア対応をめぐり最終的な決断を下していないとの立場をとっている。米政府高官は、米国が軍事行動に踏み切る場合、単独では行わないとし「複数の同盟国と参加について協議している」と語った。また、攻撃は1日で終わるとは限らないと述べた。別の米高官によると、引き続き軍事攻撃の目標の明確化に取り組んでいるとし、アサド政権の化学兵器使用能力を低下させ今後の使用を阻止することが検討されているという。攻撃開始の時期は依然不透明となっているものの、国連調査団がシリアに滞在している間は、西側諸国が攻撃を始める可能性は低いとみられている。シリアの隣国で、北大西洋条約機構(NATO)に加盟するトルコでは、軍が警戒態勢を強めている。イスラエルは予備兵を動員し、シリア、もしくはレバノンからの攻撃に備え防衛力を強化している。シリアのジャファリ国連大使は、反体制派による3回の攻撃でシリア軍が毒ガスを浴びたとして、これらの攻撃について調査するよう潘国連事務総長に書面で要請したことを明らかにした。また、シリアのミクダード副外相は、米国や英国、フランスはシリアで「テロリスト」が化学兵器を使用する手助けをしたと非難した。西側諸国による空爆の可能性が強まる中、シリア市民の間では緊張が高まっている。シリア情勢を受けた原油供給懸念から、原油価格は6カ月ぶりの高値をつけた。これに追随し、米エネルギー関連株が上昇し、米株式市場は上昇して取引を終えた。ただ、シリア情勢緊迫化を嫌気し、新興国の株・債券・通貨は全面的にトリプル安の展開となった。」

確かシリアに”アラブの春”が飛び火したのが2011年3月のこと。最初は大人しくデモ行進をしていた民主化勢力が、いつの間にか先鋭化した集団の武力闘争に引きずられ、政府との武力衝突が起きてから既に2年を越えてしまっています。政府軍は内戦を戦えるだけの経済力がありますが、民主化勢力は何処から武器弾薬を得ているのでしょう。.

シリアに隣接するレバノンにはヒズボラという私設の軍事組織を保有するシーア派勢力がいます。このヒズボラのスポンサーはイラン。恐らく、ヒズボラはシリアの反政府勢力に武器弾薬を支援し、少人数かも知れませんが軍事アドバイザー的な人間を派遣して、政府軍への攻撃の指導を行っていると思われます。

エジプトでもそうですが、中東に於ける民主化運動は、我々日本人が連想する、王政や独裁制を打破して、民主的な選挙により得たばれた大統領制を戴く共和政体、あるいは議会制を戴く民主政体を目指している訳では必ずしもありません。むしろ宗教(イスラム教)を優先させた宗教政体を作ることを目指してる。政教分離が大原則と信じている日本人からすると、大変復古主義的な運動なのです。確かに、中東には長期独裁政体や王政が未だに残されています。これらを政教分離の西欧民主主義政体なみにするというのも、欧米側の政治姿勢から見てのお話しで、これが絶対に正しいとは言い切れません。現に米国はイラクやアフガニスタンで、そうした民主化に失敗し、混乱と騒乱だけを残して、撤兵を始めていますから、これが正しいという民主化はありません。そこを注意しないと、反民主化弾圧=悪という単純な見方に陥ります。

さて、どうして、オバマ大統領は迷うのでしょうか?

少し前になりますが、6月28日にロシア外務省のスポークスマンは、サウジアラビアは同じ君主制国家六か国(クウェート、サウジアラビア、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦)がシリアに経済援助を行うことはテロ行為だと非難しました。実際にサウジアラビアなどの産油国で王政を敷く国々は、シリアで行われている内戦でシリア政府に勝利をして欲しいと願っています。民主化の広がりは、王政の危機と捉えているのは明らかです。この姿勢は2011年2月4日にバーレーン市民がエジプトの反政府デモに呼応して反政府デモを開始し、最大野党のシーア派政党「ウィハーク」などを始め諸勢力が王制廃止を訴えはじめてデモが過激化した際には、連合軍を組織してバーレーンに3月中には制圧してしまいました。この強硬な手法を取る背景には、イランの勢力拡大を阻止したいという思惑が絡んでいます。

実はバーレーンには米海軍・第五艦隊の司令部が置かれています。民主化運動は間近に見ていたはずですが、それが軍事力で封殺されるのをオバマ政権は黙認しました。理由は、この民主化がシーア派による宗教支配を目指すものであり、米国の目指す民主化とは全く違うという解釈があることと、シーア派の背後にはイランがいるのは明らかだからです。

そのイランはアサド政権を支えようと熱心に支援をしています。その理由は旧ソ連の隷属国であったシリアを、ソ連崩壊後に援助の肩代わりをして従属国と見なしてきました。シリアの隣国はレバノンです。レバノンにはヒズボラがいます。イランはヒズボラへの影響力を確保し、スンナ派諸国による反シーア派・反イラン・ブロックの牽制を外交方針としていますから、アサド政権の崩壊はイラン外交の崩壊を意味するに等しいという話しになってしまいます。アフマディネジャド政権が退かざる得なかったのも、シリア内乱の収拾が出来なかった手腕の無さも一因にあるとも云われています。

さらに、シリアが何度か越境攻撃をしているトルコの存在も侮れません。トルコは現在「新オスマン外交」戦略を推進しています。『カスピ海から北アフリカ、バルカンからホルムズ海峡まで』の諸国と外交を通じて影響力を行使していこうとする戦略です。その根幹にあるのは、隣国の政治体制は現状維持を支持するという中東の君主制にも寛容な姿勢にあります。イラク、シリア、エジプトなどに影響力を行使していくことで、トルコが地域大国を目指すのが目標ですが、そうする背景にはイランの「大イラン勢力圏」構想の阻止があります。

つまり、サウジアラビアやバーレーン、カタール、アラブ首長国連邦、トルコなどは、イラン包囲網の形成をお互い外交の主軸に据えて活動しているのですが、その為にはシリアのアサド政権は崩壊させてはならないという認識で統一され、現在は協調している状況です。この点では米国も英国も同じ考えだと思います。アサド政権を倒してしまうと、その後にイランの傀儡政権が出来てしまったら、イラクだってどうなるか判らないですし、産油国の政情不安は石油高を招いて、経済が混乱するのは必至ですから。

そして、シリア政府が管理している化学兵器が政府の崩壊でヒズボラなどの過激派の手に渡ったら、これは最悪です。イラクの化学兵器だって、流出していないとは言い切れない。そんな二の舞は避けたいという事情もあります。確かに、化学兵器を内戦で使用する事には懲罰を加えねばならない。しかし、アサド政権を崩壊させれば、その責任は米国に降りかかるかも知れない。国連統治なんて話しになれば、イランがテロを主導して、民主化を妨害し、内戦は治まるどころか泥沼化するかも知れません。

また踏み込んで云えば、シリア軍が使用した毒ガス(恐らくサリンだと云われてます)は、実はイランの特殊部隊が密かに現地に入り込み大量殺戮を行い、その情報を慎重に英国に流したという可能性も考慮した方が良いかも知れません。実際、イラクの時には化学兵器がなく、米国の正義は語るに落ちたのですから、米国が慎重になるトラウマは理解できます。こういうナイーブさ(あるいは正直さがピューリタリズムが建国の原動力であることの証)は、英国にはありません。

そんなこんなを考えると、よし!ミサイル攻撃でシリアへ懲罰を加えるぞとは、簡単に決断できないと思います。オバマ大統領の苦悩は暫く続くでしょうね。最近のオバマ大統領は白髪が増えて、見るからに憔悴しています。
*追記
英下院は29日夜、本会議で、シリアでの化学兵器使用に対する「強力な措置」の必要性について議会の同意を求める政府の動議案を反対多数で否決した。 キャメロン首相は否決後、「議会の決定に従う」と述べ、英国がシリア・アサド政権に対する武力行使には参加しない方針を示した。」
英国も深慮遠謀を巡らせたというところでしょうか。

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